【動画】男子100メートル高校記録保持者・清水空跳が所属する星稜高校陸上部の練習=伊藤進之介撮影

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指導者が選手に厳しく接し、とてつもない練習量をこなす。そんなかつての「強豪校」の雰囲気はまるでない。 昨夏、陸上男子100メートルで12年ぶりの高校記録となる10秒00をマークした、清水空跳(そらと)(17)が所属する石川・星稜高校の練習だ。 走るメニューは1日に1~3本。合間に、恋愛の話で笑い合うこともある。 シーズン前に陸上経験のある記者がその練習に参加し、大記録の理由を探った。清水空跳の先生が探す「スイッチ」 伸びしろを残す令和の指導法はインスタのフォロワー1万5千人 ◇ 星稜高校の練習に興味を持ったのは、インスタグラムがきっかけだった。 同校陸上部のアカウントはフォロワーが1万5千人。高校陸上部では異例の多さだ。 投稿者は顧問の西野弥希(みき)先生(49)。カメラを向けられた生徒たちは、厳しい練習の合間にポーズを決めたり、カメラ目線をしたり。まるで友達のような関係性に見えた。 午後3時。競技場で練習開始を待っていると、すぐにその印象が変わった。 「西野先生、こんにちは」 生徒たちは緊張感をもち、礼儀正しくあいさつする。なれ合いはない。 あいさつについて西野先生に聞くと、こう明かした。カギは「体の使い方」 「愛嬌(あいきょう)はあった方がいいです。例えば学校外の練習会で、元気にあいさつをされた他校の先生方は、次にまた声をかけたくなりますよね」 練習が始まり、私も参加した。 5人ほどのグループに分かれ、股関節のストレッチやハードルまたぎ、肋骨(ろっこつ)を動かすなど、20種類近くのメニューを休みなくこなす。 ハードな筋力トレーニングではない。だが、慣れない動きでへとへとになる。 「コンセプトは体の使い方を上手にすること」と西野先生。 「現代っ子」は外遊びが少なくなったと感じている。様々なパターンで体の動かし方を身につけることが狙いだ。 次は走路での技術練習。星稜高校には「2段階歩行ドリル」と呼ばれる、走りの根幹になる練習がある。片足を地面の近くまで下げ、頭から足先までを一本の棒のようにする準備をし、弾む。 西野先生自身も星稜高の出身で、全国高校総体では走り幅跳びで入賞した。日本選手権に出場した経験もある。跳躍選手らしく、地面からの反発を推進力に変える動きがベースにあるようだ。 清水がこの練習のポイントを教えてくれた。「接地する瞬間だけ力を入れて、あとはリラックスする。そのメリハリが大事」 私も挑戦した。すると、「反対の足は上げすぎない方がいいっす」と1年生の選手がアドバイスをくれた。星稜高では日頃から、各選手が教え合う習慣があるという。「得する人間になる」 スタートダッシュを意識し、立ち幅跳びで前へ跳ぶ練習もあった。 このころから、西野先生に声をかける生徒が増えてきた。インスタグラムで見ていたような、和やかな雰囲気だ。 「先生、見てください」 「もう少しおなかに力を入れた方がいいよ」星稜高・西野先生の教育論とは 生徒はまず自分で考え、西野…