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「みんなで一つの音楽を作ることが、吹奏楽の醍醐(だいご)味で、同時に難しさだと思います」 29日に長野市であった東海吹奏楽コンクール(東海吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)の中学生A部門で、同市の地域バンド「NJB柳町」団長の藤沢やえさん(3年)は、舞台後にそう振り返った。 藤沢さんたちにとって、特にその壁にぶつかりながらもがいた1年だった。【東海吹奏楽コン】中学生Aの結果はこちら 春日井市立中部など全日本へ 藤沢さんが吹奏楽を始めたのは中学から。「小鳥のようなきれいな音色」のフルートにはまり、「理想の響きをめざして自分の音を育てていく」感覚に夢中になった。 昨冬のアンサンブルコンテストには、フルート三重奏のメンバーの一人として出場し、全国大会へ。自信を深めた。 奏者一人ひとりの技術はそれなりに成長していたが、足かせになっていたのが、国の方針で進む部活動の地域移行だった。 長野市内でも進み、2025年秋にNJB柳町が発足。五つの中学校の生徒が所属する新しいバンドとしてスタートを切った。 メンバーは29人で、東海大会に出場する団体では少ない方だが、各学校から集まる生徒が一つになるのは難しい。 求められるのは、一言で言えば「息の合った演奏」。でも、実際には一瞬のうちに、奏者数十人がかなり複雑な調整を重ねる必要がある。 コンクールのために選んだのは、バレエ音楽「シバの女王ベルキス」(レスピーギ作曲)。原曲は手の込んだ壮大な作品で、パート数も多い。 顧問の村上恵美子教諭も指導に戸惑いながら、「まとまり感の足りなさ」を課題に思っていた。 正確な音程やリズムで吹くのはもちろん、主旋律と伴奏をそれぞれどれくらい聴かせるか。パートごとの和音の重なり方を微妙に変えたり、楽器から楽器へのメロディーの受け渡しが滑らかになるよう調整したり。楽譜上は同じ「フォルテ」記号でも、強弱やニュアンスは違いを出す。 そうした気の遠くなる気配りを29人で統一しないといけない。演奏中にホールの響き具合を聴きながら、臨機応変に微調整するケースもある。 藤沢さんたちは、一体感のある曲作りのため、「セクション練習」に力を入れた。 パートの枠を超えて金管楽器や木管楽器といった大きなグループで集まり、それぞれの楽器と奏者がどう動いているかを確認しながら合奏する練習だ。 でも、離れた学校から通う生徒らは参加できないことも。藤沢さんは「一つの音楽を作る意識」を高めようと、みんなで演奏を振り返ったり、目標や課題を確認し合ったりする話し合いを何度も重ね、本番に挑んだ。 アラビアを舞台に描かれた「ベルキス」の異国情緒あふれる旋律で会場を包むと、曲の後半では、藤沢さんが「日の出を浴びて踊る女王の姿」のイメージで、深みのある柔らかな音色のソロを紡いだ。 続く最終楽章は、宴のシーンを全体で力強く吹く山場へ。細かく流れる木管のパッセージや重厚な金管のサウンドが絡み、交互にメロディーをリードしながら、最後の一音へ駆け上がった。 結果は、金・銀・銅の3段階評価で銀賞だった。 藤沢さんは「形も音も違う色々な楽器が集まって和音を奏でて音楽を作るのはやっぱり楽しい。完璧な演奏ではなかったけど、全員で力を出し切れました」と口にした。