ストーリー2026年7月3日 6時00分河原田慎一印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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吹奏楽に情熱を燃やす中高生にとって、最高の舞台である全日本吹奏楽コンクール。春日部共栄高校(埼玉県春日部市)は毎年、西関東支部代表として名を連ねてきた常連校だ。 埼玉の「御三家」と呼ばれる同校(他2校は伊奈学園総合、埼玉栄)だが、昨年9月の西関東吹奏楽コンクールは金賞に輝いたものの、全国大会に進める支部代表3校には選ばれなかった。 自分たちの演奏に、何が足りなかったのか。例年よりも早く引退となった3年生の「思い」を背負い、残された部員たちの模索が始まった。試練乗り越えた人の「本気」の演奏を 部員の投票で、部長に選ばれたのはオーボエの成田愛生希(めぶき)さん(3年)だった。成田さんは中学ではクラリネットを吹いていて、オーボエは高校から。1、2年の時のコンクールも、全国大会に通じるA組(55人以内)メンバーではなかった。 だが、顧問教諭の織戸祥子さん(37)は「昨年のA組の経験もなく、先輩の思いを受け継ぐ部長の大役は大変だと思うが、視野の広さや思考の柔軟性があり、私も適任だと思った」と太鼓判を押す。 再びの全国へ――。部員から募集したキーワードを組み合わせて、今年度のスローガンは「不撓不屈(ふとうふくつ) 揺るがぬ情熱 心響(しんきょう)の頂(いただき)へ」に決まった。 成田さんは「結果に対する不安はもちろんある」とした上で、こう続けた。「部長も部員も『音楽にかける人たち』という同じ立場。たくさん試練を乗り越えてきた人にしか出せない味のある音で、聴く人が『聴いたことない』と思うような本気の演奏がしたい。結果は後からついてくる」全員で取り組む「ラ・メール」 春日部共栄は近年のコンクールで、クラシックの名曲を吹奏楽に編曲した作品に多く取り組んできた。だが、今年は三澤慶作曲の「ラ・メール」を選んだ。 交響詩「海」を作曲したフランスの作曲家ドビュッシーへの「追想」が込められた作品で、音階や和音にフランス音楽の語法が使われている大曲だ。織戸さんは「音を聴きあい、緻密(ちみつ)に音を重ねていく『合奏力』の高さ、という春日部共栄の強みを生かせる曲」と語る。 予選大会となる埼玉県吹奏楽コンクールには、A組のほか、人数制限はないが県大会のみのD組に分かれて出場する。今年はA組とD組の自由曲を同じ「ラ・メール」にした。部内オーディションで、奏者の入れ替えを可能にするという理由もある。 そして、メンバー決めが最も熾烈(しれつ)になったのが成田さんのいるオーボエパートだ。もちろん、部長だからA組に選ばれるということはない。全員が一人ずつ、織戸さんや合奏指導の中村睦郎さん(58)の前でオーディションを受けなければならない。 ラ・メールのオーボエパートは2人。トップが曲の主題を朗々と奏で、もう一人のイングリッシュホルンは中間部でフルートと掛け合う、大事な役回りだ。春日部共栄のオーボエパートは、3年生だけでも3人いる。さらに2年生は、昨年のA組メンバーだった実力者だ。 127人の部員全員が「ラ・メール」に取り組み、そして、緊張のオーディションの日がやってきた。 ◇ 再びの全国大会の舞台へ。吹奏楽に青春をかける春日部共栄高校吹奏楽部の挑戦を追います(随時掲載します)。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






