ストーリー原爆に奪われた朝鮮人青年の夢 小説でよみがえる「語られぬ史実」2026年8月24日 12時00分武田肇印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

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81年前の広島への原爆投下では、朝鮮人「応徴士」と呼ばれた人たちも被爆した。戦時中の労働力不足を補うため朝鮮半島から動員された若者らだ。広島平和記念資料館でも関連展示は限られ、その人生が語られる機会は少ない。そんな彼らを等身大の人間として描いた小説が日本語で出版された。「不都合な歴史」の扱いに違和感も 韓国人被爆2世が見た原爆資料館 タイトルは「ヒロシマ物語―朝鮮人徴用工、そして原爆―」(261ページ)。著者は韓国在住の許光茂(ホグァンム)さん(62)。市民団体「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」の河井章子さん(69)=千葉県=が翻訳した。 朝鮮人「応徴士」は、戦時中の国家総動員法や国民徴用令に基づいて工場などへ動員された朝鮮半島出身の若者たちを指す。天皇の下で日本人と植民地出身者を区別しないとする「一視同仁(いっしどうじん)」が掲げられたが、実際には差別にさらされた。現在では「徴用工」と呼ばれることが多い。元徴用工や在韓被爆者の証言集め 小説の主人公は1923年に朝鮮半島で生まれた青年。貧しい農村で育ち、家族を相次いで失って孤児となる。京城(現在のソウル)で写真館の見習いとして働き、生活が安定しかけた矢先、徴用令書を受け取り三菱重工業広島造船所に動員される。 同じ境遇の朝鮮人青年たちとの友情や、仲間と路面電車の女性運転士との恋も描かれ、青春小説としての魅力も備える。物語は、被爆した主人公が仲間の介抱を受けながら生死の境をさまよう場面で幕を閉じる。 許さんは韓国の政府機関「対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会」の元調査課長。日本各地で朝鮮人強制動員の実態を調べ、数百人の元徴用工や在韓被爆者から証言を集めてきた。報告書だけでは若い世代に伝わりにくいと感じ、集めた資料や証言を小説という形で描いた。 「聞き取った証言に再び命を吹き込み、当時を知らない世代にも届けたかった。登場人物の会話や心情も事実を土台にした」。作品は2013年に韓国で刊行された。 翻訳した河井さんは13年前、親交のある許さんから作品を受け取った。その後、元徴用工訴訟をめぐって日韓関係が悪化し、「徴用工」という言葉が対立の象徴のように語られるようになったことから、「一人ひとりの人生を知ってもらう必要があるとの思いを強くした」という。「日本は加害者でもあった」 編者で翻訳家の市村繁和さん(58)は「被爆前の広島を外国人の視点から描いたまれな小説」と評価する。 当時の広島は、多くの若者が戦場に赴き、女性や高齢者が目立つ都市だった。「朝鮮人青年たちも祖国を奪われた苦境の中で、それぞれ立身出世を夢見ていた。その夢も徴用と被爆によって崩れ去ったことが具体的な人物像を通じて伝わる」と話す。 一般書店では販売していないが、市民団体「『ヒロシマ物語』日本語版出版委員会」が希望者に1500円の協力金で頒布している。 代表で被爆者の豊永恵三郎さん(90)は「日本は原爆の被害を受けた一方で、アジアの人々に対しては加害者でもあった。その歴史を若い世代にも知ってほしい」と話している。申し込みは豊永さん方(082・822・0766)。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人武田肇広島総局員専門・関心分野原爆・平和、朝鮮半島、鉄道関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする