ストーリー差別はびこる今こそ「読んで」 ある小説の復刊願い青年たちは動いた太田悠斗印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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ある小説の復刊を願う若者たちがいる。 アイヌ民族三代の苦難を描いた『十勝平野』。芥川賞や直木賞候補にもなった作家・上西晴治の最後の作品とされる。 この夏、彼らは上西の故郷を訪ねた。 札幌市から南東に約200キロ。十勝平野東端のまち、北海道浦幌町だ。 ◇ 8月初旬。3人は太平洋に注ぐ浦幌十勝川の河口付近を歩いた。 「ここに本当にコタン(集落)があったんだ」 川は平野を蛇行するように内陸へ伸びる。実際のコタンは、もう少し上流にあったという。 それぞれ厚さ3センチほどの上下巻を抱え、史実と照らしながら作品の舞台をめぐった。 札幌市の桃井希生さん(31)が『十勝平野』を知った頃、浦幌町のアイヌ団体「ラポロアイヌネイション」が国と北海道を相手に漁業権の確認を求める訴訟を起こした。「川でサケ漁をするのは先住民族に固有の権利(先住権)」だと訴えていた。 桃井さんは作品から、明治、大正、昭和と、100年以上にわたって形を変えながら続く差別と、あらがうアイヌ民族の姿を読み取った。 「最初の主人公・オコシップはサケ漁など狩猟採集の生き方を奪われ、息子・周吉は生活様式を変えても攻撃され、孫・孝二が生きる戦後には、差別が『隠れた』ものになっていきます」 小説は1993年に筑摩書房から刊行され、同年中に3回増刷されたが、その後の文庫化や重版はかなわなかった。 電子書籍化はされているが、紙の書籍を新品で買うのは難しい。 「現在も差別が蔓延(まんえん)し、先住権すら認められていない日本社会で、差別がどういうものか描いた『十勝平野』を一人でも多くの人に読んで欲しい」 ◇ そのために、何が出来るだろう。 上西の生誕100年にあたる2025年9月、桃井さんは、友人で編集者の上川伶さん(30)と朝日新聞の上保晃平記者(27)を誘い、魅力を伝える「ファンブック」をつくった。 上西と親交のあった哲学者で詩人の花崎皋平さんへのインタビューや、『十勝平野』を所蔵する全国の図書館リストなどを盛り込んだ。 あれから1年。3人は上西の企画展を開いた町立博物館から関連講座の講師を依頼された。 「今朝、浦幌十勝川の河口を歩くと、波が穏やかで、タンチョウが飛んでいた。岸辺には、『サケ捕獲禁止』の看板が出ていた。作品の世界とのつながりを感じました」 3人は町内外から集まった34人に語りかけた。 ◇ 「私は開拓農民の子孫です」 約1時間の講演を終え、質疑…この記事は有料記事です。残り554文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人太田悠斗北海道報道センター|司法担当専門・関心分野共生、外来種、生きづらさ関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする






