【社説】プーチン氏の北方領土初訪問 実効支配の誇示は許されない2026年8月13日 21時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●ロシアのプーチン大統領が北方領土を初訪問。制裁を続ける日本を牽制した●プーチン氏は下院選を控える。対外的に強い姿勢を誇示して求心力を高める狙いか●高市政権には、当面の権益を確保しつつ、筋を通す外交手腕が問われる

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日本が主権を主張している領土に足を踏み入れ、実効支配を誇示する。そうした行動は決して許されない。 北方領土の択捉島をロシアのプーチン大統領が訪れた。2010年に当時のメドベージェフ大統領がソ連、ロシアを通じて国家元首として初めて北方領土を訪れたが、プーチン氏の訪問は初めてだ。 ウクライナ侵攻をめぐって欧米とともに対ロ制裁を続ける日本を強く牽制(けんせい)する意図があるのは明らかだ。 プーチン氏はいま、ウクライナ侵攻をめぐって国内で厳しい立場にある。戦闘が長期化し、膨大な死傷者を出している。ウクライナの無人機による長距離爆撃で製油所や物流拠点が破壊され、支持率は下落している。 9月にプーチン政権への信任を問う下院選が控える中、反戦を訴える唯一の野党を選挙から排除するなど、与党圧勝の演出に躍起だ。対外的に強い姿勢を誇示することで、国内の求心力を高めようとしているとみられる。 日本への警戒感もある。上陸直前、プーチン氏は「ウクライナでの事態の原因を理解せずに対ロシア制裁を導入した」と批判した。日本と北大西洋条約機構(NATO)の防衛協力が強化されていることなどに懸念を深めており、対ロ外交の足並みを乱そうという意図が透ける。 高市早苗首相が「断じて許容できない」と批判したのは当然だ。日本は対ロ制裁を緩めてはいけない。 さらに問うべきは「力による現状変更」の論理だ。ロシアはウクライナ領土の占領地を自国領として併合を宣言した。北方領土でも軍事拠点化を進めている。今回の上陸で実効支配の既成事実化を加速させようとしている。 日本は資源開発プロジェクト「サハリン2」の権益を持ち、国内エネルギーの安定供給にロシアの協力が欠かせないジレンマを抱える。 安倍晋三元首相はプーチン氏と首脳会談を繰り返し、信頼醸成や経済協力を通じて領土問題の打開を目指した。だが、ロシア側の姿勢はほとんど変わらなかった。 実利は維持し、エネルギー調達の多角化を通じてロシアの揺さぶりが効かない構造を築く。そうした中長期の戦略が求められる。 日本は、領土の帰属が国際法と外交上の合意によって決められるという「法の支配」の守護者であり続けなければならない。どのように筋を通しつつ、当面の権益を確保して、将来の対ロ関係を再構築していくか。高市政権の手腕が問われる。ロシアのプーチン大統領、北方領土を初訪問 茂木外相「強く抗議」「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません