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国際平和シンポジウム「核兵器廃絶への道~日本被団協結成70年、原点長崎から」が7月25日、長崎市であった。今回で32回目。核保有国の「力の支配」への回帰や社会の分断に対する懸念が共有され、廃絶に向けて私たちはどうあるべきかを議論した。基調講演 核依存に戻る世界、日本の役割とは 基調講演では、アメリカン大教授で核問題研究所長のピーター・カズニックさんが、世界的に核兵器増強の動きが強まっていることを語った。そして、「人類滅亡がこれほど近づいたことはない。日本は新しい世界を築く努力の先頭に立つべきだ」と訴えた。【動画】ピーター・カズニックさんの基調講演パネル討論 「人類滅亡」を防ぐために 四つのテーマで専門家が 「最終戦争を避けるために」と題したパネル討論では、カズニックさん、現代イスラム世界を研究するアントワープ大(ベルギー)のロシャナック・シャエリヤジディ准教授、宗教学が専門の加藤喜之・立教大教授、文学研究者の小川公代・上智大教授が登壇。石合力・朝日新聞編集委員を司会に、四つのテーマで多角的に議論した。【動画】「最終戦争を避けるために」をテーマにパネル討論会が開かれた特別トーク 若い世代の問い、田中熙巳さんは 特別トーク「日本被団協結成70年とこれから」では、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の田中熙巳さん(94)が、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)特任研究員の平林千奈満さん(25)、ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会スタッフの並川桃夏さん(27)と登壇し、ピース・バイ・ピース・ナガサキ代表の前田真里さん(45)を進行役に、平和運動の継承などについて語り合った。合間には、俳優・石原さとみさん(39)のインタビュー動画が放映され、動画を差し挟みながら話が進んだ。 登壇者たちはまず、今年で結成70年を迎える日本被団協のあゆみを振り返った。 田中 日本被団協は被爆から11年後に結成された。戦後7年間は連合国軍の占領下にあったため、被爆者たちが声を出して語ったり訴えたりすることができなかった。 米国の水爆実験で第五福竜丸などが被曝(ひばく)した1950年代のビキニ事件で、全国に核兵器の恐ろしさが知られるようになり、核兵器をなくそうという運動が起こる。その結果、第2回原水爆禁止世界大会があった長崎で日本被団協が結成された。 前田 田中さんは実は、私の長崎東高校の先輩。結成された場所は、その東高だった。 田中 私はその年に東京理科大に入学して、その時は長崎に帰省していた。長崎東高校の体育館が大会の会場で、高校生の時にいつもバスケットボールをしていた場所。そこで結成に立ち会うことができた。 前田 70年も組織を継続させるっていうのはすごく大変なこと。どうやって続けてきたのか。 田中 活動の中心になる人は教師が多かった。また、10年ごとに目標を立てて、計画を立てて集中して活動してきた。核不拡散条約(NPT)再検討会議には必ず出席する。国連で原爆写真展をやる。そういうことが良かったのかな。 並川 高校生、大学生の時に一緒に活動していたメンバーは、だいたい平和活動をやめてしまう。プライベートが忙しくて、時間が取れなくなってしまう。やっぱり誰かが余力を使って、仲間を見つけて、行動を続けていくことが大切なんだなって思う。 平林 原爆のパネル展をしたことがあるが、展示の仕方次第で伝わるものが違う。海外の人に伝えるときに大切にしていることは。 田中 非人道的とか、国際法違反といった言葉では、全然伝わらないと感じる。現実感がないんだと思う。心を動かすような媒体を使って、心に伝わる方法を、ぜひ若い人たちに研究していただきたい。 「材料」は、これまでに被爆者たちがたくさん作り上げてきた。それを大いに活用してほしい。オンラインだけではなく実際に外国にどんどん出かけていって、対話をしてほしいと思う。石原さとみさんの言葉 「愛」に共感 後半は、石原さんのメッセージに応答しながら、トークを展開した。 〈18年前に番組の企画で長崎の地を訪れてから、自分にとっては人生の原点でもあり、自分を律してくれる、とても大切な場所になっています。〉 〈長崎の皆さんと関わるたびに思うのですが、怒りや悲しみではなくて、大きな愛や許しを伝えてくれる姿に何度も心が救われた記憶があります。長崎は平和を学ぶ場所でもあるんですけど、大切な友達がいる、大切な場所ですね。〉 平林 「愛」というところにすごく共感した。正直言うと、小さい頃はあまり平和教育が好きではなかった。怖いな、苦しいなというか。ただ、被爆者の講話が終わった後に、何か心が温かくなるな、とも感じていた。 最初は理由に気付けなかったが、いまは、被爆者が自分の苦しみを二度と繰り返してはならないという思いを伝えてくれているからだと思う。それは愛だな、と感じている。 田中 再び被爆者をつくってはいけないというのは、これから生まれてくる人たちも含めての大切な愛。絶対に同じ苦しみを与えてはいけないということだ。「長崎の体験を直接聞ける最後の世代。だから、私には、責任がある気がする」 〈(私は)長崎の体験を直接聞ける最後の世代だと思っています。だから、私には、話を聞いたという責任がある気がするんですね。〉 〈戦争や原爆を、教科書の中の昔の出来事にしてほしくない。あの時の壮絶な痛みみたいなものを、ちゃんと想像できる人でいたい。〉 並川 私も被爆証言を聞く時に、自分の妹や家族が、と考えるだけで涙が出そうになり、本当にリアルに感じる。被爆者が当時感じたことまで理解することはできないにしても、感情という部分は少しは近づくことができるのかなと思う。 (石原さんは)「聞いた責任がある」と言われていた。被爆者の証言で、私の心や記憶にしか残っていないものもあるので、大切にしながら伝え続けていく。 平林 痛みを想像するということは、当事者意識をもって、心が動かないとできない。被爆者の話や見たものに対して、自分が心を動かされたこと、感じたことを、誰かに伝える時に、「私はこう思ったんだよね」というふうに自分の言葉で話すことが大事なのかな、と思う。「世界中に友達ができたら、世界平和に近づくと、心から思っているんです」 〈大好きな人だったら、知っている人だったら、友達だったら、その友達の住んでいる国を傷つけようなんて、絶対に思わない。〉 〈だから私は、世界中に友達ができたら、世界平和に近づくと、心から思っているんです。〉 〈だから、世界で友達をつくりたい。世界中に友達を作るためには、いま隣にいる大好きな友達に大好きって伝えて、大切にするところから、その一歩が始まると思います。〉 田中 心からそう思う。地球の人々はみんな友達なんです。それを忘れて、国に分かれて戦争してきた。 1発で何万人も殺す兵器を、戦争で使うことがどうして許されるのか。人を殺したら大犯罪。ところが数十万人を殺しても、それが戦争であれば、命令した人は大犯罪にならないのか。そういう素朴な疑問から分かち合っていきたい。 前田 長崎市は「地球市民」という言葉を大切にしている。 並川 石原さんや田中さんの話を聞いて、思ったことを家族に話すことも平和活動の一歩だと思う。その一歩を大切にしていきたい。 田中 みなさん夢を持ちましょう。夢を持ったらそれを希望に変えましょう。その希望を実現するために、何をするかを考えましょう。「被爆者の熱意感じた」 NPT会議取材の記者が報告 核廃絶運動をめぐる現状について、核不拡散条約(NPT)再検討会議を現地で取材した朝日新聞長崎総局の池田良記者(44)と、長崎新聞で平和運動を取材している手島聡志記者(30)の報告も行われた。 池田記者は、NPT再検討会議に合わせて4月に訪米した被爆者たちの動画を上映し、「私が現地で感じたのは、80歳を超えた被爆者の熱意と気迫だった」と振り返った。また、原爆投下をめぐる米国の世論調査の内容を示し、「若い人、女性ほど原爆の投下に関して正当化できないと答えている」と指摘。そのうえで「今後、若い世代や女性が社会の役割を担い、非人道性の主張の輪が広がり、核軍縮、その先にある核兵器廃絶の機運が世界に広がると思っている」と希望を語った。 手島記者は、長崎新聞で2024年10月から1年間掲載した「山川先生の平和ゼミ」を紹介した。当時1~7年目の若手記者4人が、被爆者で元教諭の山川剛さん(89)に初歩的な質問をぶつけ、読者に学びを体験してもらう狙いで展開したといい、「継承はなぜ必要か、常に考えてほしい」という山川さんの言葉が印象に残ったという。「報道機関としての役割を常に模索し、アップデートし、新たな報道の形を考えていきたい」と話した。「核とは共存できない」 被爆者の思い、永遠の会代読 オープニングでは、朗読ボランティア「被爆体験を語り継ぐ 永遠(とわ)の会」の大塚久子代表(68)が、長崎原爆の被爆者で2017年に88歳で亡くなった谷口稜曄(すみてる)さんの被爆体験記を朗読した。 冒頭、背中が赤く焼けただれた当時の自身の写真を掲げる谷口さんの姿が、スクリーンに映し出された。16歳の時、自転車で郵便配達中に、爆心地から約1.8キロの路上で被爆。熱線で背中を焼かれた。 「腹ばいのまま、1年9カ月、痛みと苦しみの中で『殺してくれ』と叫んでいました」 長崎県音楽連盟の演奏に合わせて、大塚さんは、谷口さんの核廃絶への強い思いを代弁するように読んだ。 「私は、人間が人間でなくなることを体験したものとして、再び、私たちのような人間をつくらないため、世界の人々に訴えます。核と人類は共存できないことを。核兵器で人類や地球を守ることはできないことを」 永遠の会は14年度から活動し、高校生を含め86人が登録しているという。大塚さんは朗読後、「谷口さんの被爆体験記を何度も読み、世界へ向かって訴える使命感も伝えようと特別な思いで読みました」と語った。 ◇主催:長崎市、長崎平和推進協会、朝日新聞社▽後援:長崎県、長崎文化放送、広島市、広島平和文化センター、広島県、広島ホームテレビ▽協力:長崎新聞社 ◇シンポジウムの総合司会は、長崎文化放送の下田朋枝アナウンサーが務めました。







