令和のお習字 墨ではなく水で? 「色」に情熱注ぐ京都の老舗が考案2026年7月10日 7時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

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光を浴びると、柄の色が変わるTシャツ。触っていると、体温で色が変わる紙粘土。秘密はどうやら、光や温度に反応する特殊な色素にあるらしい。創業から、実に1世紀。「色」に情熱を捧げてきたカイシャを紹介する紙面が白黒で、ホンマ、すみません。 そのカイシャは、京都・山科にある松井色素化学工業所。光、温度、水分など環境に応じて色が変わる「機能性色素」を開発してきた。売り上げの多くを海外でたたき出す。屋外へ出ると、光に反応して色が変わるTシャツは、1980年代に登場するとアメリカで爆発的に売れたという。一方、日本ではすんなりとは受け入れられなかった。 「日光の当たる店頭で、売る前に色が変わってしもたらどないすんねん」 「洗濯して効果が薄れてしまったら、クレーム、来るんとちゃうか」 楽しけりゃ別にええやんというアメリカ、完璧を求めるあまり、話が途中で止まりがちな日本。 こうした日米の文化の違いにとどまらず、社長の中島博史さん(63)は、中国にも日本とは異なる空気を感じている。同社が世界に先駆けて開発した、水分を検知すると色が変わる機能性色素は、ペットシートに採用された。おしっこをすると色が変わり知らせる。「まだ60点の出来」と思っていたが、今年いきなり大口注文が舞い込んだ。 「60を100にするのはゼロを60にするより難しい。だから、60点でも恐れず市場に出す。100点になるまで市場に出さない日本とは対照的ですね」 「安全」の分野でも機能性色素は活躍中で、赤色のペン「サーモマーカー80」はその一つ。65度で色が赤から黄に変わり始め、80度になると冷えても戻らない。高温になっては困る配電盤などにマークしておくことで、過去の異常発熱が一目でわかる仕組みだ。 電気工事業界に口コミで広まり、関西人には歌うCMでおなじみの某協会でも点検に使われているらしい。いち早く漏電に気づけたと、大手ゼネコンから感謝状が届いたことも。 今、売り出し中なのが、水で書ける半紙「ジデェール紙」だ。水分検知色素の力で、筆に水をつけて書くと、あら不思議。字がでぇ~る。「小3から毛筆の勉強が始まりますが、墨で手や服、机が汚れて困ると、子も親も学校も悩まなくてよくなります」と営業担当の片山友希さん(41)。 水で書けて、水が乾くと字が消える半紙は、すでに百均で売られている。一方、ジデェール紙は乾いても消えず、清書に向く。 めざすのは、次回の検定教科書への採用だ。前例はある。小4理科の教科書に載っている「水のあたたまり方」の実験。ビーカーが熱せられて対流が起き、水が温まる様子が、温度で色が変わるインクのおかげで目に見える。掲載されると、売れに売れた。 水分検知色素を用いた紙おむつも試作を進めている。赤ちゃんがおしっこをすると、おむつ一面にカラフルな花柄が現れる。「交換するのが楽しみになるような、夢のあるおむつを作りたい」と中島さん。 色を巡る冒険に、終わりはなさそうだ。会社メモ 松井色素化学工業所 1923(大正12)年、絵の具商として創業。アパレル業界向けインク・転写マークなどのプリント材料、周囲の環境に反応して色が変わる機能性色素などを開発・製造する。京都市などが選ぶ、持続的成長が期待される「オスカー認定企業」。年商31億5千万円、従業員112人。ひとこと 東京都内で書道を教える浜飯(はまい)政美さん(50) 昭和の昔、人気の習い事だった書道は、令和の今、汚れると敬遠され、プログラミングやダンスにお株を奪われた。私の生徒さんも半数以上が大人。ジデェール紙は書道の間口を広げてくれるのではと期待しています。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません