ストーリー2026年7月6日 7時30分稲葉有紗印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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「うお、やっぱ速えな」 7月上旬、奈良県立磯城野高校(田原本町)のグラウンド。天谷亮太(3年)が投げ込む球を見て、杉本功輝部長(33)は思わず声をあげた。天谷は入部当初から持ち前の長打力で一目置かれていた三塁手。しかし昨秋以降は、試合終盤を任される二番手投手としても存在感を高めている。 杉本部長が「あの日があったから天谷は成長した」と振り返ると、部員たちから「伝説の日っすよ!」と笑い声が飛んだ。「投手クビやな」から141キロへ あの日とは、初めて登板した1年の5月、西城陽(京都)との練習試合。1点を追う終盤でいきなり「投げてみるか」と監督が提案した。ところが、ど真ん中にしかボールが行かず、1イニングで60~70球ほど投げて10失点。ほろ苦いデビューとなった。 「投手クビやな」としばらく仲間にいじられたが「面白い思い出。マイナスな気持ちにならないくらい打たれたので」と笑う。投手を一時断念したが、昨夏からの新チームは駒不足で「貢献したい」と再びマウンドに立つようになった。 特別な練習はしていないというが、毎日の自主練は欠かさず、ベンチプレスなど週2~3回のウェートトレーニングにも励み、冬明けには成果がはっきりと表れた。打撃面では本塁打を量産するようになった。 投球面で周囲を驚かせたのは今春の県大会だった。高田戦で七回から登板すると、電光掲示板には「141キロ」の表示。スタンドがどよめき、指導者らの間でしばらく話題になった。これまで球速を測ったことはあまりなく「自分でもびっくりした」という。野球部唯一のシェフ 二刀流の天谷には、もう一つの顔がある。フードデザイン科シェフコースに所属し、調理師免許の取得を目指している。野球部員のほとんどが農業科で、シェフを志すのは天谷のみだ。 食品衛生や食文化を学び、30~40人分の料理を作る実習などに日々取り組む。宿題で独自のレシピを考案したり、ホワイトソースの実技テストに向けてグラタンを作ったり、バレンタインのお返しとしてマネジャーらにいちごタルトを振る舞ったりしたこともある。 卒業後は、世界最高峰の料理学校「ル・コルドン・ブルー」のマレーシア校が併設されているサンウェイ大学で学びたいという。3歳から応援するオリックス・バファローズの食堂でメインシェフになる夢も思い描いている。 「料理は1人で作れるが、野球は1人がよければ良いというものではない」 最後の夏、剛腕シェフは仲間とともに、まずは2勝を目指す。「2回勝てば、おそらく強豪の天理にあたる。食らいついていきたい、とみんなが思っている」有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

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