ストーリー天空へ続く坂道、志も高く 山に囲まれた村で奮闘 十津川高校野球部2026年7月7日 7時30分稲葉有紗印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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「よし、いくぞ」 6月中旬、雄大な山々に囲まれた十津川村。野球部の5人が一斉に駆け出した。急な坂道を約1キロ、5~7分で上り切る。傾斜がきつい場所では「うわあー!」と悲鳴が上がり、声が山々にこだまする。それでも、軽トラックや村民とすれ違えば、元気なあいさつは欠かさない。 足がちぎれそうな痛みで、ゴール地点に倒れ込む。さびた赤色の展望台から天空をあおぐと、2往復目へとすぐに折り返す。 「天空ランニング」は十津川で代々受け継がれてきた練習メニューだ。昔は山中も走ったが、2016年に剣道部の生徒が一時行方不明になってから、指導者の目の届く集落内に限定された。 中圭介部長(40)も現役時代、野球部員としてこの道を駆け上がった一人。当時の部員は20人。単独チームとして出場し、夏の奈良大会は16強入りした。毎週、片道2時間かけ 現在活動するのは、3年3人と1年3人。部員不足のため、24年から合同チームとして出場している。週末は片道2時間をかけて合同練習や試合に向かう。たとえ1人だけの練習になっても、生徒が手を抜く姿は見たことがない。「厳しい環境だが、文句ひとつ言わないこの子たちは本当にすごい」と目を細める。 主将の岩本響(3年)は、十津川産のスギやヒノキでものづくりを学ぶ木工芸系列に在籍。幼い頃から見てきた父の背中を追い、大工になるのが夢だ。 中学までサッカーをしていたが、十津川にサッカー部はない。同じ香芝中出身の坂口悠馬(3年)に誘われ、野球部に入った。個人の努力が成果に直結する競技に、すぐ魅了された。 入部時、先輩は3年の1人だけだったが「ノックも打撃もやり放題でうれしい」と前向きに捉えた。天空ランニングは「しんどい」を超えて「痛い」。でも、足腰は確実に鍛えられる。唯一の休みである水曜は、部長を務める工芸部へ向かう。少し眠たい朝もあるが「応援される人間になれ」という先生の言葉を胸に、学業も手を抜かない。 坂口は小学校から野球を始めた。同じく木工芸系列に所属し、卒業後はトラック運転手を目指す。寮長として生徒らをまとめる存在でもある。入学時に思い描いた「自分たちの代で単独チームに」という夢はかなわなかったが「今は逆に、合同チームのみんなに出会えたことが何よりうれしい」と笑う。 2年時には、新入部員が入らず、廃部の危機にも直面した。今年の春、野球部の紹介パンフレットを作ってみると、1年生が3人も加わった。天空ランニングの叫び声は来年も坂道に響きそうだ。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
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