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東京・下北沢に、ちょっと風変わりな書店があります。予約制で、住所は非公開。香水や、においの強い整髪料の使用はNG――。様々な利用上のルールを設けている一方、子育て世帯を中心に、根強い人気を誇っているのです。コミュニティースペースとしても愛される店のいまについて、店主の元アイドルに聞きました。さながら地域の休憩所店の名は「夢眠(ゆめみ)書店」です。人気アイドルグループ「でんぱ組.inc」の元メンバー、夢眠ねむさんが2019年7月14日に立ち上げ、2026年で7周年を迎えます。「本好きのための書店ではなく、これからの本好きを育てる書店」をコンセプトに、木造平屋建ての古民家を改装。室内の押し入れや、合計五つの本棚には、料理本や絵本、文庫本などがひしめきあいます。その場で読むもよし、買うもよしです。さらにカウンター席とソファつきの喫茶室に加え、子どもが自由に過ごせるキッズスペースや、色とりどりの草花が揺れる庭も備えています。「蔵書は全部私物です。家に入りきらないものを持ち込んだり、出版社から献本していただいた自分の著書を並べたり。正確な冊数は……もう数えていないですね」。夢眠さんが笑います。お客さんは思い思いに、店内での時間を楽しみます。置いてある漫画を一巻ずつ読んでいく。周辺で用事を済ませる前に、ご飯を食べに来る。さながら、地域の休憩所といった趣です。ところで店舗の公式サイトには、来店の際に守ってほしいルールが載っています。例を挙げると、次のような内容です。「お店の利用は予約制」「店舗の住所は非公開」「男性の1人客、カップルの入店は不可」「香水、香りの強い整髪料の利用はNG」「結構ややこしい店だという自覚はあります」と夢眠さん。しかし、ユーザーへのお願いを重ねる背景には、切実な理由がありました。子連れで安心して訪れられる場にそもそも、夢眠さんが書店を開いたのは、子連れでも安心して訪れられる場所を増やしたいという思いゆえだといいます。「アイドルを卒業したころ、姉が女の子を出産したんです。一緒に出かけると、ベビーカーで乗り越えられない階段や、子どもが大声で泣き出すと入りづらいお店が、予想外にたくさんあると気づきました」「当時、私は未婚だったのですが、子どもがいるだけで、色々な場面で気を使わなければならないことを実感しました。そして自分自身も、町中で泣きわめく子に対して、うるさいな、などと思ってしまっていたかもって考えたんです」本であれば制限なく買い与えてくれる両親の元で育ち、頻繁に書店へ赴いてきた夢眠さん。何となく手に取った一冊により、人生が変わる経験をしてきたそうです。そこで子どもたちが、自分で好きな本を選べる場をつくりたいと思い立ちました。店の設立に向けて、姉や育児中の友人の助言を踏まえ、おむつ交換台やキッズスペースを準備しました。そして育児中の人々も心置きなく過ごせるよう、1時間半の予約枠を一日に三つ設け、2026年現在は各回8人まで入店可能としています。男性の1人客や、カップルの来店を断っているのも、出産や育児について語りたいお母さんたちへの配慮からです。香水などの利用を控えてほしいという呼びかけは、妊婦客がにおいによるつわりに苦しむ事態を避ける目的があります。ちなみに男性は、夫婦や親子でなら訪問できます。夢眠さんは「お父さんのワンオペ育児デビューに使ってもらうこともあります。他のお客さんと協力してお子さんの面倒を見る場面もあり、安心して預けられるというお母さんは多いようです」といいます。来店後に泣き出した母親本屋としてスタートした夢眠書店ですが、次第にコミュニティースペースとしての色も濃くなっていきました。理由の一つが、かつてフレンチ料理人だった、夢眠さんの姉・まあさんが調理を担当する喫茶の存在です。クッキーやカレーなど、数ある定番メニューの中でも、「うどん」は抜群の人気を誇ります。姉妹で幼少期から親しんできたという、実家の魚屋秘伝のブレンドだしを使用。素材は全て無添加のため、離乳食向けにだしのみを買い求める親御さんもいるそうです。夢眠さんが語ります。「うどんを提供しているのは、店を訪れるお母さんたちが、誰かが作ったおいしいものを温かいうちに食べられるように、との思いからです。だしは私たちの母が開発してくれました」子育てに奮闘する日々の中、うどんをすすりながら、ほっと一息つく。そんな人々が集い、いつしかお客さんたちの間で交流が生まれました。印象的だった出来事について、夢眠さんが振り返ります。「ある女性客が、子の離乳食を全て手作りしなければ、と思い詰めた様子で話していたんです。すると、近くにいた別のお母さんが『うちは全部レトルトですよ』と返した。互いに語らううち、最初の女性客が泣き出し、『私もレトルトを使います!』と言っていました」「育児中は、自分のやり方にこだわってしまいがちですよね。でも、こだわるのがしんどいのなら、やめたっていい。家族以外の第三者から、そう伝えてもらうことって、とっても大事だと思います」かくいう夢眠さん自身も、お客さんたちに助けられてきたそうです。週末を中心として、2歳になる長男と共に、店舗内で過ごす機会が多いといいます。その際、常連か一見(いちげん)かを問わず、我が子と遊んでくれる人々が少なくありません。「私が皿洗いなどで忙しいとき、たくさん触れ合ってもらえて救われていますね。長男が、あまりにもお客さんの輪の中になじんでいて、初めて来店した人は息子だと気づかないこともあります(笑)。みんなに育ててもらっている感じです」夢眠ねむさんが支えたいもの手相占い会など、親子で楽しめるイベントも多数催し、人と人の縁をつなぐ拠点となってきた夢眠書店。全ての取り組みに通底するのは、「なくならないでほしいもの」を支えたい気持ちだと、夢眠さんは語ります。「元々は、大好きな本屋が減り続ける状況下で、一軒でも店舗を増やそうという考えでやってきたんです。そうやって営業を続けていたら、同じ思いを持つお客さんたちが集まってきてくれました」「自分がなくなってほしくないと考えているものを、他の人々も必要としてくれている。そのことに気づけて、とてもうれしいですね」訪れる人々の心を本で、おなかを料理で満たす、夢眠書店。その明かりは、今日も誰かの人生を照らしています。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel






