コラム・寄稿「黒牢城」黒沢清監督が初の時代劇で映した現在 これは反戦映画だ2026年6月19日 14時00分月永理絵・映画ライター印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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19日公開の映画「黒牢城(こくろうじょう)」は、カンヌ国際映画祭のカンヌ・プレミア部門で上映され、好評を博した。映画ライターの月永理絵さんは、黒沢清監督にとって初の時代劇に「現在」を見た。 ◇ 時は戦国時代。「スパイの妻」で第2次世界大戦下の日本を舞台にしたが、侍たちが闊歩(かっぽ)する本格的時代劇は、黒沢清監督にとって初の試み。にもかかわらず、ここにはたしかに「現在」が映されている。 時代劇とはいえチャンバラ劇ではない。原作は米澤穂信のミステリー小説。織田信長に反旗を翻し籠城(ろうじょう)した城主・荒木村重(本木雅弘)と腹心たちが過ごした1年間が描かれる。城の外の情勢が刻一刻と変わるなか、城内では密室での殺人など不可解な事件が頻発、その謎解きが物語の肝となる。村重の命で地下に幽閉された軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)が探偵役となり、牢の中から次々に謎を解いていく。 籠城という設定上、カメラが城の外に出ることはほぼない。また時代劇ゆえ描くべき時代からの逸脱は許されず、フレームは厳格に定められる。画面の外からふいに現れる風景や音によって、「虚構=ドラマ」の中に「現実=リアル」を吹き込み、不穏さをかき立てる。それが黒沢映画の基本的な構造だったとすれば、フレームの外を映せず、物語に忠実にならざるを得ない本作の撮影はいかにも不自由だったはず。 それでも、徹底した虚構の中に現実はいや応なく姿を現す。村重は武士の理(ことわり)にあらがう人である。人質を殺さず生かすことを選び、武士が名誉のために死ぬことを否定する。背景には実際的な理由があるのだが、たやすく死を選ぶな、生き延びろと部下に説き、信仰と戦いとの複雑な関係を憂える彼の姿からは、戦争の時代となった今の世を感じとらずにいられない。様々な策略が絡み合う城で蠢(うごめ)く侍たちを描きながら、これは明らかに現代の反戦映画であり、今、私たちはどう生きるべきかを問いかける。 家臣を見捨てた卑怯(ひきょう)者として語られてきた村重を、映画は英雄とは扱わない。しかし城内での謎めいた事件の数々を通して、彼は周囲の人々と〝初めて〟出会い、新たな視野を得る。その変化に導かれるように、私たちはあるとき、画面の外に広がる広大な世界をたしかに発見する。【インタビュー】本木雅弘、「黒牢城」で初のカンヌ体験語る 義母樹木希林も追想◇全国で19日公開有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする






