2026年6月5日 10時00分東野真和印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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ホテルだった建物を2時間貸し切り、約2千着のドレスやコスプレ衣装を自由に着て撮影OK。そんな場所が秋田県大仙市で人気を呼んでいる。 「ドレスリゾートこわくび」は、田畑や木立に囲まれた旧強首(こわくび)温泉郷にある。 建物は外壁や柱のタイルが所々はがれ落ち、営業しているかさえ疑わしい。ところが、玄関を入ると、別世界が広がる。 ロビーを埋める華やかな衣装に、メルヘン調の調度品、バーカウンター、大きな額縁の枠、シフォンのカーテンをオーロラのように重ねたステージ……。館内のあちこちに撮影スポットがある。 もとは1967年開業の「こわくびホテル」という温泉宿だった。地区に温泉が出てできた温泉郷で最大規模の100人以上を収容し、最盛期には、年間約2万人が泊まった。 衣装集めの始まりは、この地区にあった陸軍の演習場を懐かしんで泊まりに来る元兵士たちが、記念撮影するために軍服を用意したことだった。 90年代に宴会でカラオケが盛んになると、「ステージ衣装」としてパーティードレスや子供服、アニメキャラクターの衣装や装飾品を買いそろえた。廃業した美容院から、高価な晴れ着なども寄せられた。今はドレスだけで1千着以上、子供服約300着などを合わせて2千着近くあるという。 好きな衣装で写真を撮るサービスも始めた。宿泊客に人気だったが、2020年、コロナ禍の営業自粛を機にホテルを休業し、フォトスタジオに。140畳の大広間はほぼドレスで埋まり、客室を着替えスペースにした。 当初は女将の伊藤久子さん(61)と夫の竜寛さん(67)が撮影していた。スマートフォンの性能が良くなり、今は「お客さんたちで撮り合っている」と久子さん。 基本料金は、2時間貸し切りで1人9千円~1万円。北海道から関西まで、年間約500人が訪れる。 岩手県花巻市の新渕薫さん(88)は今年4月、撮影に訪れた。孫で盛岡市の保育士・三ケ田亜美さん(29)から、米寿のサプライズプレゼントだった。 亜美さんの母の新渕枝里子さん(52)が11年前、ウェディングドレスを着た経験がない母親を連れてきたことがあった。その時に一緒だった亜美さんが、今度は家族に秋田旅行をプレゼントし、途中に立ち寄った。 亜美さんは「断られるかと思った」が、薫さんは「生まれて初めて来る。一度は着たかった」と大喜びだった。最初にピンクのドレスを選んだ。最初は緊張していたが、3着、4着と衣装を替えるうちに表情も和らいだ。 最後に着た白いドレスの写真が一番のお気に入りで、自宅にも飾っている。薫さんは「昨年他界した主人に見せたかった。腰を抜かしただろうね」と笑う。 伊藤さん夫妻が、ずっと気になっていることがある。東日本大震災の前に宿泊したことがある被災地の人たちの安否だ。 津波で自宅を失った人に、ここで撮影した写真を無料で届けようと、宿泊名簿を探して片っ端から電話した。連絡の取れた数人には送れたが、他の数十人は電話がつながらなかった。 久子さんは「家族の写真を失った方もいるだろう」と、今も案じている。問い合わせは電話(0187・77・2211)で。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人東野真和釜石支局長|震災復興・地方自治担当専門・関心分野震災復興、防災、地方自治、水産業印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする