2026年6月3日 6時00分小西孝司印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

[PR]

脳腫瘍(しゅよう)の手術は無事成功したものの、記憶力に障害が残った。改善する方法はないか。和歌山市の小学5年の女児が取り組んだのは、日本の伝統的な話芸だった。 和歌山市の市立藤戸台小学校の片山怜和(れな)さん(10)は2歳の時、突然頭痛を訴え、数日ごとに嘔吐(おうと)した。県立医科大付属病院で検査すると、頭の真ん中に直径4~5センチほどの腫瘍(しゅよう)が見つかった。 10時間の開頭手術など手術を重ねた後、大阪市の病院で抗がん剤治療で8カ月にわたり入退院を繰り返した。神戸市の病院でも放射線治療を続け、寛解した。 でも、少し前に聞いたことが覚えられない短期記憶の後遺症が残った。繰り返し反復する学習や暗唱に取り組むようになった。 怜和さんが4年だった2025年春、社会科教諭の父親(44)が勤める高校の生徒が、落語のコンクールで優勝した。落語はネタを覚える必要があり、ひとを笑わせることが好きな怜和さんにぴったりだった。「めっちゃ、向いていると思えへん?」。怜和さんと妻の美織(みお)さん(41)に提案した。 怜和さんは、子どもたちが落語などを学ぶ団体「わかやま楽落会(らくらくかい)」の体験会に参加した。小話を覚えて披露すると、「すごい上手」とほめられ、「どはまりした」という。 いつも笑顔でいることや、幼い時の自分の呼び名をもじって、芸名を「にこにこ亭あっぽん」にした。7月、両親らがかつて手術の成功を祈った和歌山市の和歌浦天満宮の天神祭で披露すると、友人が「すごい」とほめてくれた。大阪の主治医は「脳にいいと思う」と太鼓判を押した。 落語は月に1~2回、老人会や福祉施設で披露する。自宅でも稽古し、本番で頭が真っ白になったことはなく、「楽しい。人が笑ってくれるから」。五つほどの持ちネタをさらに増やし、将来はお笑い芸人の夢を描く。 「成績がよくなったし、自信がついてきた」と美織さん。「小児がんになったお友達には、亡くなった子もいる。その子たちのことを忘れずに、感謝しながら生きていかなきゃいけないよ、と話しています」 次の舞台は7月12日、橋本市東家1丁目の教育文化会館で開かれる講演会・落語会。市ゆかりの世界的数学者、岡潔を顕彰する岡潔数学体験館の主催で、怜和さんは数学にちなんで「時そば」を披露する。そばをすするしぐさもお手のもので、「笑顔になってほしい」。どんなまくらにするのか、美織さんと思案中だ。 □ 講演会・落語会は午後1時半~3時。第1部で元県教育長の小関洋治さんが「人はなぜ旅をするのだろう」と題して講演する。第2部では怜和さんのほかに、橋本市在住のすずめ家すずめさんが岡潔をテーマにした新作落語「スミレ」を演じる。 定員は先着150人程度。参加無料。申込期間は6月5日~7月9日で、QRコードから。問い合わせは市教育委員会生涯学習課(0736・33・3704)か岡潔数学体験館(土・日曜、0736・25・5050)。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする