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連載「窓」 「きょうは調子がいいね」 タブレット画面に映る数学の問題を見て、大学生になった北村桃奈さん(19)が親指を動かし、数字や記号を入力していく。その様子に、母の幸(みゆき)さん(48)がほほえむ。 桃奈さんは茨城県石岡市で生まれた。保健師だった幸さんは生後まもなく、異変を感じた。 首がなかなかすわらない。足もつっぱらない。寝返りが打てない――。 1歳を過ぎたころ、脊髄(せきずい)性筋萎縮症(SMA)と診断された。徐々に筋肉が衰えていく進行性の難病だ。 いずれは呼吸も難しくなり、気管を切開して管を入れなければ命の危険がある。が、そうすると声が出なくなる。 幸さんは、気管切開をせず娘のそばに居続けることを選んだ。右手の親指は動かせた 2歳の頃から鼻マスク型の呼吸器を装着し、24時間態勢でたんを出すなどの介助を続けた。 5歳になる前に全身の筋肉がほぼ動かせなくなったが、右手の親指は動かせた。地元の小中学校を経て、隣接する土浦市の県立高校の普通科に進んだ。複数の支援員についてもらうなどし、他の生徒と同じ教室で学校生活を送ることができた。 「もっと勉強したい。障害がある人の役に立つ仕事ができるように」と思って、大学受験に挑んだ。めざしたのは、家から通えて、興味があるプログラミングなどを学べる茨城大学工学部だ。 大学入学共通テストでは国語、英語、数学、物理など8科目を選択。障害への配慮から試験会場内の個室で受験し、試験時間は通常の1.5倍だが、2次試験も含めて問題は健常者と同じだ。記述に苦戦、不合格も諦めず浪人 タブレット画面の問題に、親指を上下左右に動かすフリック入力で答えていく。アルファベットの入力や選択問題が比較的多い英語はできたが、下書きや記述が要る数学と物理は時間が足りず、つまずいた。 結果は不合格。補欠合格の電…この記事は有料記事です。残り626文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人原田悠自東京社会部|教育担当専門・関心分野教育・子育て、調査報道、社会問題関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする