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望月浩一郎弁護士 日本高校野球連盟は指導者や部員間の暴力根絶のための取り組みを続ける。 今年3月には各都道府県高野連の理事長や専務理事に向けて、「暴力・暴言・ハラスメントに頼らない指導」をテーマに講演会を開いた。 講師を務めた望月浩一郎弁護士に、指導者に求められる意識とはどんなものかを聞いた。 ――なぜスポーツ界から暴力はなくならないのでしょう。 指導者の暴力には、四つのパターンがあります。一つめは「確信犯タイプ」。自身が選手時代にそういう指導を受けて成功して、指導者になっても「これがいいんだ」と同じようなことをしてしまう。悪いと思っていないんです。 二つめは、ダメだとわかっているけど、どうしていいかわからなくなって手を上げてしまうパターン。何回言っても選手が聞かなくて、というものです。 三つめはいわゆる切れてしまうタイプ、四つめは自分のストレス解消のために暴力をふるうタイプ。三つめと四つめが明らかにダメなのは分かりますよね。問題は前者の2タイプをどうなくしていくか。 勝利至上主義が暴力の原因だという意見がありますが、私はそうは思いません。指導はかけ算「情熱×正しい方法」 元サッカー日本代表で、日本サッカー協会公認S級コーチの資格を持つ福田正博さんは「指導力は『情熱』と『指導方法』の掛け算」だと言います。私も同じ意見です。 情熱は「ある」か「ない」かです。しかし、指導は「正しい方法を知っている」「何も知らない」だけではなく、「誤った方法しか知らない」というマイナスがあります。 情熱があり、かつ正しい指導方法を知っていれば素晴らしい指導者です。情熱が「0」の人は指導方法を知っていようがいまいが、0に何をかけても0にしかなりません。つまり、勝利を目指そうとしなければ問題も起こらない。 問題は情熱があるのに、暴力に頼るという指導方法しか知らないパターンです。かけ算で大きくマイナス方向に進んでしまう。勝利を目指すことが悪いのではなく、正しい指導方法を知らないのが問題なのです。甲子園至上主義からの脱却を 元球児が提言する持続可能な高校野球 ――正しい指導方法とはどんなものでしょうか。 私自身はスポーツ指導者ではありませんので、成功した良い指導者の経験を伝えることにしています。彼らに共通しているのは、「伝える力」と「選手の主体性を育む力」だと思います。 スポーツとは本来、自ら考えて行動する力を育てる上で有効なものです。試合でコーチの指示を待っていたら、プレーがワンテンポ遅れてしまう。主体性がないとハプニングに対応できない。 柔道界では2012年ロンドン五輪で金メダル1個に終わりました。当時、日本のトップ選手たちは試合中に監督の方ばかりを見ていたと言います。なぜこんなに「指示待ち」なんだという課題が浮かび上がりました。大会後、女子日本代表監督による暴力が発覚しました。 その後、柔道界は選手が意見を言いやすい、風通しの良い組織への改革を進め、21年の東京五輪では金メダルを9個獲得しました。 新たな技術や能力を獲得するためには努力が必要で、アスリートが自ら厳しい練習に取り組むことは正しい姿です。ただ、これは指導者が選手に厳しい練習を強制することとは全く違います。人間関係が密接な環境に注意を ――昨年、広陵(広島)が上級生から下級生への暴行で夏の全国選手権を途中辞退しました。部員間の暴力も大きな問題です。 指導者の暴力より、部員間の暴力のほうが報告件数としては多いです。その中の加害者側が将来指導者になることも多く、どこかで止めてしまわないと負のスパイラルのようにいつまでも暴力が続いてしまう。 ――広陵の場合は、野球部の寮内で問題が起きました。 部活動という人間関係が密接な環境では、いじめや暴力が起きやすい。寮の場合、その関係が練習が終わった後も続くわけです。ほかの部活の生徒や親と一緒にいる時間があれば、部内でいじめや暴力などが起きても、もう一方のところで緩和できるのですが。問題が起こりやすいことを大人は認識しておかないといけない。 ――では、なるべく寮生活の中でも、外部との接触機会を増やすなどの工夫をした方がいいと。 そうですね。あとは、広陵の暴行事案の原因になった「カップラーメン禁止」といったくだらないルールはやめたほうがいいです。SNS上でのトラブルなどを避けるために、スマートフォンの利用を禁止しているチームも多いと聞きますが、今は学校の授業でもタブレットを使う時代ですからね。正しい知識を伝えて、使い方を教えてあげなければいけない。意味のない規制はストレスの原因になります。 ――指導者がどう導くか、ですね。 選手たちの主体性を育み、強くなるためにどうしたらいいんだ、うまくなるにはどうしたらいいんだと自分たちで考えていれば、カップラーメンがどうだとか、そんなつまらないところに気が回らないでしょう。プロフィール もちづき・こういちろう 1956年、山梨県生まれ。弁護士。スポーツにおける暴力や不祥事案件を多く取り扱い、日本学生野球協会審査室委員も務める。「高校野球 アップデートしてますか」の連載ページはこちらから











