部活動文化のアップデートを 広陵の暴力事案の調査報告が示す本質2026年6月1日 17時50分中小路徹印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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部員間の暴行事案を受け、昨夏の全国高校野球選手権大会を途中辞退した広陵高校(広島市)が、5月28日に出した調査報告は、高校野球のみならず、部活動全体の在り方も問うている。「一方的な叱責は尊厳を侵す行為」の意識を 指導死をなくすために 報告では、同調圧力と暴力の親和性を挙げた。部内には「甲子園出場を最重要目標とする過度な同調圧力」があると指摘。その目標達成へ、「生徒間または指導者と生徒の関係において、暴力または威圧的指導が一定程度許容される空気が存在」したと言及した。 高い目標を掲げ、多くの部員がしのぎを削る部で、指導法や環境作りを誤れば、暴力が生じるリスクが高い。これは、熊本県立大津高校サッカー部のいじめ問題で昨年10月に公表された報告書でも、「全国大会に出場できる選手は一部」「はけ口を求めていじめなどに走る生徒が現れることは容易に想像できる」と触れていた。 高い目標を持つことも多人数の部も、生徒たちのニーズに応える面があり、否定はしない。ただ、学校が生徒一人一人に対応できる態勢を整えているか。昨夏の広陵は、マネジャーを入れて164人の部員がいた。練習場所や指導者の数、相談窓口などスポーツ活動を安心して十分にできる環境確保は教育機関としての義務だ。 広陵の報告は、学校が硬式野球部の実績に依存する一方、指導者の発言力が強くなり、学校が監督責任を果たせなくなる構造にも焦点を当てた。人権侵害という意識が希薄ではなかったか これは今年4月、新潟県立高校の柔道部員の自死が監督による「指導死」と認定され、報告書が「学校が監督の専横に対する牽制(けんせい)機能を作用させていなかった」と指摘した状況と類似性が高い。 広陵の報告で最も本質としてとらえたいのは、「本件暴力行為は重大な人権侵害」の文言だ。 これまでの部活動はそもそも、暴力やいじめは相手の尊厳を損ねる人権侵害だという意識が指導者、生徒を通じ、希薄ではなかったか。高め合う仲間の人権を大切にし、話し合いをもとにチームをつくっていく。社会性を身につける場としての部活動の価値を高める意味でも、そんな方向性を大事にしてはどうか。 「部活動文化」のアップデートが必要だ。 スポーツは勝敗があるからおもしろく、勝利を目指すのが悪いのではない。ただ、試合で勝てたか、レギュラーメンバー入りできたか、という結果に焦点が当たりすぎていなかったか。切磋琢磨(せっさたくま)するプロセスでの成長に重きを置く価値観への転換によって、部活動が一人一人にとってさらに意義深い場となり、「勝たせる指導者」への絶対視もなくなると思う。【連載】高校野球 アップデートしていますか?有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人中小路徹スポーツ部|スポーツと社会専門・関心分野スポーツと社会、サッカー、朝鮮半島関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする