2026年5月23日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●核不拡散条約(NPT)の国際会議は立場の違いが際立ち、合意文書も出せなかった●軍縮の義務に背を向け、むしろ軍拡を進める核保有国の責任は極めて大きい●日本政府は明確な意志を持ち、戦争被爆国として期待される役割を果たすべきだ
[PR]
核兵器が再び使われかねないという脅威が現実味を増す中での国際会議は、危機を防ぐための考え方や行動で一致できなかった。軍縮の義務をないがしろにする核大国の責任は極めて大きい。 核不拡散条約(NPT)の履行状況を点検するため、核兵器を持つ国と持たない国が米ニューヨークの国連本部に集まった。4週間の議論で、軍縮への行動の指針などを盛り込んだ文書の内容に合意することを目指した。 決裂は3回連続だ。核兵器を持つ国々、その力を借りて安全を守ろうとする国々、核に頼る発想からの脱却と軍縮を求める国々。様々な立場の違いが表面化し、分断の根深さを印象づけた。 米国とイスラエルによるイラン攻撃、ロシアのウクライナ侵攻や原発の占領、欧州での核戦力強化、NPT脱退を宣言して核開発を進める北朝鮮といった論点で対立が際立った。文書案は4度の改訂を重ね、骨抜きが進んでもなお、合意に至らなかった。 1970年発効のNPTは、核保有国を増やさない不拡散と軍縮、平和利用を柱にする。保有国と非保有国、約190の国・地域が加わる。米ロ間で核軍縮の枠組みがなくなった今、NPTが掲げる目標の重みは増している。 NPTは、米ロ英仏中の5カ国だけに核保有を認める代わりに、核軍縮の交渉を誠実に行う義務を定める。2000年の会議は保有国による核廃絶の明確な約束をうたった。今回もその再確認が文書案に盛り込まれていた。 力を背景にした保有国の横暴が目に余る。むしろ軍拡を進め、大国が核の威嚇さえためらわない。ロシアは会議の期間中、核兵器の使用を想定した大規模演習を実施した。 核の脅威が差し迫る。米ロ間の歯止めをどう担保するか、核戦力を増やす中国なども交えた多国間の枠組みをいかに構想するかなど、課題は多い。国際的な議論の場はNPTに限らない。対話をあきらめず、分断を越え、行動に結びつける努力が引き続き求められる。11月には核兵器禁止条約の履行状況を点検する会議が予定されている。 戦争被爆国の日本は、今回の会議に首相や外相が参加しなかった。その存在感は明らかに低下している。米国の核に安全保障を頼っている現実と、核なき世界に向けて主体的に行動することは、必ずしも矛盾しない。 意志を持ち、期待されている役割を果たすべきだ。非核三原則を堅持し、平和国家としての歩みを続けることが説得力の裏打ちとなる。成果文書を採択できなかったNPT再検討会議 読み解くポイント5つ「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする














