ストーリー第6回気まずい「主夫」、「野心家だね」と言われた妻 奇異の目にうんざり山本悠理印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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連載「親って、しんどい」~規範が生む息苦しさ~ ⑥ 「すごいですね」 驚きのような、戸惑いのような。それらが混じった声を聞くたびに、夫婦は何とも言えない気持ちになる。主な働き手は夫、育児は妻――。そんな子育て世帯の「普通」とは違う自分たちを、異端視しているような空気を感じるからだ。 10年近く前、2人は大きな決断をした。 3人の出産をはさみ長期で育休を取っていた妻(42)が、職場に復帰した。それと入れ替わりで、夫(40)は勤めていた会社を辞め、家事育児に専念することにした。 夫婦で話し合った末の結論だった。子どもはかわいい。なのに、ふと「しんどい」と思ってしまう――。その背景には、「こうあるべき」と親や家庭に求められる息苦しさがあります。愛情だけでは片づけられない葛藤のなか、子どもと向き合う親たちの姿を伝えます。 教員である妻は、転勤があったとしても県内のみ。一方、金融機関に勤める夫は関東圏内のどこにいつ転勤を命じられるか分からない。収入も、妻の方が安定して高かった。 転勤で簡単には住む場所を変えられない事情があった。次男が生まれつき珍しい病気を患っており、いまは近くの病院に詳しい医師がいる。専門の医師は大都市でも限られていて、急な対応が必要になった時のことを考えると、ここを離れるのは不安だった。 次男が生まれた際、夫は3カ月の育休を取った。育休を取りたいと職場に告げると、上司の女性から「評価に響くのでやめた方が良い」と、こんこんと諭された。妻も夫の職場に手紙と菓子折りを贈って後押ししたが、「ここまでやらないとダメなのか」という思いを抱いた。夫が職場に復帰すると、今度は年上の同僚女性からつらく当たられた。 次男の病気のことを伝えたにもかかわらず、その後、夫は片道2時間かかる職場への転勤を命じられた。会社の理解を得ながらの両立は、どうにも難しそうだった。 そして妻が1人で長男と次男の世話をしていた時期を振り返ると、どちらも心身の余裕がなく、夫婦でぶつかることがしばしばあった。「2人とも働きに出たら、離婚するかも知れない」という危機感を共有していた。 お互い納得した上での「主夫」と、外で働く妻という家族のかたち。ただ、周囲からの視線が気に掛かった。「旦那さん、OKって言ってる?」募るモヤモヤ 夫が直面したのは、どことな…この記事は有料記事です。残り1634文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人山本悠理文化部|be編集部専門・関心分野現代詩、現代思想、演劇・演芸、法律学関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする