2026年5月23日 16時24分倉富竜太 興津洋樹 武田肇印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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米ニューヨークの国連本部で開かれていた核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議が22日(日本時間23日)、「成果文書」を採択できず閉会した。会期中、現地に赴いた被爆者らは落胆しつつ、核廃絶に向けた運動は続けたいとの思いを強くした。記憶なき被爆者たちのストーリー 広島の胎内被爆者で、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の事務局長、浜住治郎さん(80)=東京都稲城市=は23日午前に開いたオンライン会で「非常に残念だという一言に尽きる」と悔しさをにじませた。 会議では被爆者代表として各国政府の代表団を前に「80年前の原爆投下はいまも被爆者の身体、暮らし、心に影響を与えている。原爆は人間と共存できない、悪魔の兵器」と演説。原爆が人間に何をもたらし、それに対し被爆者が何をしてきたか、「3分間という限られた時間だったが、自分として訴えたいことを述べた」と思っていた。今回の結果に「核兵器と人間は共存できない、ということをもっと国内外で訴えていく必要がある」と感じたという。 長崎原爆の被爆者、今井セイ子さん(80)=大阪府寝屋川市=も「核兵器廃絶の動きに世界が逆行している」と落胆した。 浜住さんら被爆者の演説があった日、会議場で空席が目立ったことが気になった。核兵器を使用したらどういう結果になるのか、聞く耳を持たれていないようで、もどかしかった。 現地の高校を訪問した際には「これからは若いみなさんの時代です。戦争も核兵器もなくすためには対話が必要」と訴えた。不採択という結果は残念だったが、「だめだったと落ち込むのではなく、根気強く声を発信し続けたい」と前を向く。 NPT会議に伴う渡米が4回目だった、広島県原爆被害者団体協議会理事長の佐久間邦彦さん(81)=広島市=も「ここで被爆者や市民社会があきらめれば終わりだ。日本政府がNPT強化に役割を果たすよう求めることも含め、行動を続けていく」と今後に焦点を置く。 現地では、核兵器の非人道性の認識を広げることが決裂の歯止めになると考え、加盟国の外交官と面談し、被爆者であることを理由に自身が受けた差別などについて証言した。「多くの国で核軍縮が進んでいない現状への危機感を訴え、声を残したことは意味があった。NPTは、核保有国に核軍縮を迫る唯一の条約であることに変わりはない」と活動を続けていく考えだ。 前回2022年の会議で被爆者代表として演説した日本被団協の事務局次長、和田征子さん(82)=横浜市=は、前回よりも議論が後退したように感じたという。「国のトップたちは、核兵器を抑止力という視点ではなく、使ったらどうなるのかという視点で考えてほしい」被爆地の首長からは危機感や憤り 広島市の松井一実市長は「極めて残念。核兵器廃絶を訴え続けてきた被爆者の切実な願いを、三度、国際社会の対立の中に置き去りにする結果となった」とするコメントを発表した。 「こうした危機的な状況が生じたことに被爆地として強い危機感を抱いている」とも指摘。「世界の約8600の平和首長会議の加盟都市と連帯し、核廃絶に向けた国際世論の醸成に取り組んでいく」と述べた。 長崎市の鈴木史朗市長は報道陣の取材に「核兵器のない世界の実現を締結国が誠実に目指しているという姿勢を、目に見える形で示せなかったことに強い憤りを感じている」と話した。 被爆2世の鈴木市長は、再検討会議で演説し、各国政府の代表団と面会したが、核兵器の非人道性を伝える難しさも感じていた。「NPT体制が事実上機能しないまま、制限なき軍拡競争が繰り広げられる。負の連鎖が加速し、核戦争に突き進みかねないという強い危機感がある」と強調。核兵器禁止条約への日本の批准を求めるとともに、NGOや市民社会と連携しながら核兵器のない世界の実現に全力で取り組むとした。長崎市長、8月9日生まれの母の死で思い新たに有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人興津洋樹西部報道センター|平和 安保 交通 原発専門・関心分野人権、平和、戦跡、歴史、福祉武田肇広島総局員専門・関心分野原爆・平和、朝鮮半島、鉄道関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする









