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「育成」に重きを置いてきた強化の専門家が、サッカーJ2のRB大宮アルディージャに加わった。水戸ホーリーホックでGMを務めた西村卓朗氏(48)は、今季、RB大宮のスポーツダイレクターに就任し、強化を担う。オーストリアの大手飲料メーカー・レッドブルが経営権を取得したクラブでの取り組みを聞いた。 ――1月に就任して、RB大宮での役割は。 「一番はレッドブル本体のやり方をまずしっかりインプットしないといけないと思った。テクニカル(分析)、フィジカル、メディカル(医療)など各領域に専門家がいるので話をしたり、ヘッドオブスポーツ(強化トップ)を務める上司のスチュアート・ウェバーとも話をしたりした」 「この組織の中で、自分が一番力を発揮できるのは、おそらく水戸時代から培ってきた日本のネットワーク。Jリーグは当然、選手やスタッフ、エージェントの大半が日本人だし、各クラブの強化担当やJリーグ、協会との関係もある。ネットワークをいかして情報収集をし、レッドブル側とのマネジメントにつなげていく。そういうところが自分の役割になってくると思う」翌日に連絡、RB大宮のスピード感 ――水戸をJ1に昇格させながら契約満了になり、さまざまなオファーがあった。 「自分のキャリアを考えていくなかで、やっぱりアジアを目指せるようなクラブという意識が頭の中にあった。契約満了になって、1回まっさらになった中で、じゃあ今どうすべきか、みたいなことを本当に考えた」 「実際に何人かのサッカー関係者、クラブ関係者にも会った。その中で、実はRB大宮は一番早く反応してくれた。契約満了の情報をすぐにキャッチして、確か次の日には連絡してきてくれた。あのスピード感がなければ、(加入の)実現はしなかったと思う」 「当然、自分が現役時代に選手として所属し、キャリアのなかで一番試合数を残したクラブだし、選手時代から知るスタッフもいる。そこは決め手になった。もう一つは率直に、面談の中で、どんな人材を求めているか、と聞いた。『プロアクティブな人材、主体的に動ける人間を探している』と言ってもらえた。そういうことであれば自分の経験や、チャレンジも含めて生かせると思った」 ――水戸では「Make Value Project」という研修を選手たちに行うなど、独自の手法でチームを育てた。大宮では。 「名前を変えて、『Gives You Wing』(翼を授ける)というプロジェクトをすでに作って、選手が学ぶ場を始めている。選手はどうしても目の前のサッカーのことを考えてしまうけど、所属している組織や企業が何を大事にしているか。どういう世界観を大事にしているかをやっぱり知るべきだと思っている」 「週の頭に全員に集まってもらって、レッドブルグループの組織の人に話をしてもらったり、他競技のアスリートの話を聞いたり。チームビルディングにもなるし、個人の教養を高める場にもなると思っている」 ――水戸では悩んでいた選手が花開いたり、育っていったりした。 「水戸では『自分がなぜサッカーを続けているのか』というのを徹底して選手に考えさせた。目標を聞けば、大概、J2の選手は『J1に行きたい』というし、『日本代表になりたい』『ヨーロッパに行きたい』って言う。それで僕はいいと思う」 「でも、じゃあ何のために欧州に行くの?と聞けば、答えはバラバラになるはず。自分と向き合って、俺はなぜそうしたいのか。そして、そのために明日から何をやるのか。それをやり続けていたのが水戸時代の選手たちで、他のチームがあまりやっていなかったこと。同じようなことをRB大宮でもやろうと思っている」アカデミースカウトも増員 ――RB大宮で育てたい選手とは。 「RB大宮は、より若年化すると思っている。今は高校3年生でプロ契約をしている選手が4人、高校2年の熊田佳斗も含めると5人いる。Jリーグや日本サッカーの中でも課題と言われているが、『ポストユース』と呼ばれる若い世代の選手たちへの徹底したサポートがポイントになってくる」 ――水戸時代のような考え方が広がり、似た取り組みをするクラブも出てきた。 「逆に言うと、どのクラブも同じようなことを言って、同じようなことをやろうとすると思う。若い選手を育てて、早く海外に行かせる、ということは、今のJ1クラブ全てのチームが言っているのではないか。(欧州に選手を買われていく)日本サッカーの位置づけがある以上、もう全部のJクラブは多分そこを目指す。でも、本当にやりきれるかどうか。あるいは、ハード面の設備とソフトを両方用意して、本当にやろうとするかっていうことが問われてくる」 「うちの今でいえば、外国人のスカウトを置いたり、アカデミー(育成年代)のスカウトを一気に増やして6人体制にしたりした。恐らく、他のJクラブからすると、かなりの力をそこにかけている。各分野のスペシャリストたちをどうつなげていくかが僕の役割」 ――このクラブで成し遂げたいことは。 「レッドブルは世界各国にあるクラブとつながっているマルチオーナーのクラブ。情報を集めるだけでなく、その地域・国のいい部分を輸出できるんじゃないか、と僕は思っている。人を育てることに注力し、結果を出す。そういう仕組みを作りたい」 「アジア、その先には世界もある。クラブワールドカップも含めて、現実的な目標として捉えられるクラブは数少ない。そのポテンシャルがある場所で、自分に何ができるか。挑戦していきたい」








