コラム・寄稿「聞けて良かった」のか、それとも…遺族取材の葛藤 追い詰める怖さ2026年4月14日 12時00分西部報道センター・杉江隼 2023年入社 行政担当(当時は事件担当)印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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返ってくる言葉が、だんだんと遅く、短くなっていった。 昨年5月、交通事故遺族の大沼かおりさんにインタビューした時のことだ。 福岡市の「海の中道大橋」で20年前、大沼さん親子5人の乗った車は飲酒運転の車に追突され、海に転落した。1歳から4歳の子ども3人が命を落とした。 飲酒運転の厳罰化にもつながった大事故だが、福岡県警の昨年のアンケートでは、事故を「知らない」と答えた県内の10代が半数を占めた。 事故を知らない人にもわかるように。飲酒運転の悲しさ、恐ろしさを伝えられるように。そう思って臨んだ取材。丁寧に、細かく尋ねることを心がけた。 大沼さんは子どもたちとの思い出を楽しそうに、そして衝突された瞬間を詳細に、説明してくれた。 雰囲気が変わったように感じたのは、海に落ちた後のことに質問が移ってからだった。 引き揚げた子どもはどんな様子でしたか。「(水面に)浮かんでいた感じ」 沈む車を見てどう思いましたか。「3人助けたいのに諦めなくちゃいけない」 答えに間(ま)ができて、声色も落ちていく。思い出してもらうことで苦しめている、と感じた。 約2カ月後に配信した記事には多くの反響があり、大沼さんからも後日、お礼の言葉をもらった。 でも気持ちは晴れない。「聞けて良かった」と「聞いて良かったのか」との間で、葛藤が今も続く。 大沼さんは遺族であり、被害当事者でもある。子どもたちを救おうと何度も海に潜った。それでも救えず、自分が生き残ったことの罪悪感を今も抱いている。 話を聞くという行為を通じて、さらに追い詰めてしまう怖さを思い知った。 何を聞くかだけでなく、相手とどう向き合うか、課題が見えた取材だった。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人杉江隼西部報道センター|福岡市政担当専門・関心分野労働、平和、スポーツ、事件事故関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする






