コラム・寄稿もし私が幸子さんだったら… 「体中に無数のガラス片」歴史伝えたい2026年5月18日 11時30分広島総局・小林晴香 2025年入社 行政担当印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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広島市の爆心地に近い、戦後復興の象徴ともいわれる市営基町(もとまち)アパート。昨年12月、建物20棟のうち16棟が老朽化で取り壊されることが決まり、そこに住む被爆者を探して取材することになった。「ついのすみかと思っていたのに…」広島原爆から復興の象徴、廃止に これまで被爆者からじかに話を聞くことはなかった。原爆投下は歴史の一ページとしての認識しかなかった。日々変わる社会で起きる様々な出来事を見聞きしたい、と記者を志した私にとって、大事にしたい取材機会だった。 だが、思いに反して取材は難航した。約120室を訪ねたものの、会えない日が続いた。灰色の空の下で途方に暮れつつ、何度も気持ちを奮い立たせた。 取材を始めて5日目。被爆者が住む部屋があると聞き、はやる気持ちを抑えて訪れた。迎えてくれたのは96歳の増野幸子さん。どう質問すればいいのか、緊張で固まってしまった。増野さんはそんな私を笑顔で招き入れてくれた。かつて夫と息子2人と入居し、12年前に夫が亡くなってからはひとり暮らしだ。 増野さんは15歳の時に被爆し、100を超えるガラス片を浴びた。小さな背中をなでながら「体の中にまだガラスがあるの」と話した。もし私が15歳の時、大きな傷が残るけがを負ったら、どんな人生を送っただろう。私のなかで「原爆投下」が単なる知識ではなく、多くの人に伝えたい歴史の一つになった。 記者になり1年。悩み、壁にぶつかってばかり。それでも、取材対象を自ら探し、心動かされる体験を繰り返したい。そして取材をして初めて見える、その人の物語を読者に伝え続けていきたい。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする






