2026年9月9日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、米国の仲介による外交交渉が久しぶりに再開した●トランプ政権には外交成果への焦りも見えるが、略奪された領土を追認することは許されない●侵攻は第1次大戦よりも長期化。プーチン政権は現実を直視し、停戦に応じるべきだ

[PR]

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐる外交交渉が7カ月ぶりに動き始めた。破壊と殺戮(さつりく)の連鎖を止める機会を再び失ってはならない。 米国のウィトコフ特使らがモスクワとキーウを訪れ、新たな和平案についてプーチン大統領、ゼレンスキー大統領と協議した。直前には、米中央情報局(CIA)のラトクリフ長官が訪ロし、ロシア側の戦況への厳しい評価をロシア連邦保安局(FSB)のボルトニコフ長官に伝え、真剣に和平交渉に臨むよう促したと報じられた。 米国、ロシア、ウクライナの3者協議は2月に開かれて以降、米国とイスラエルのイラン攻撃による中東情勢悪化を受けて途絶えていた。 その間、ウクライナ軍はドローン技術を伸ばし、ロシア全土の軍事施設や製油所などを爆撃するようになった。ロシアも迎撃が難しいジェット推進式ドローンや弾道ミサイルをウクライナの都市部に無差別に撃ち込み、市民の死傷者が急増している。 最近、ドイツの空港で爆発物を積んだドローンが見つかるなど、ロシアによる工作の疑いが指摘される不審な事件が各地で相次ぐ。これらがウクライナ支援への反撃とすれば、ロシアの攻撃が欧州に広がりつつある。 停戦交渉の最大の難所は領土問題だ。プーチン政権はウクライナの東南部4州について、ロシア軍が占領していない地域まで明け渡すように求めている。 支持率が低迷するトランプ米大統領は11月の中間選挙に向けて外交成果を得たいとの焦りも見えるが、従来の仲介者としての成果は乏しい。ここで食い止めなければ北大西洋条約機構(NATO)への戦線拡大も懸念される。 侵略で奪われた領土を追認するような和平案は許されない。ウクライナへの支援と対ロシア制裁を緩めず、侵略行為に対する重い代償を科し、ロシアの譲歩を引き出す外交が求められる。 ロシア軍も膨大な死傷者を出しながら戦果は細る一方で、長期化する戦争の負担が経済に重くのしかかる。前線ではドローン攻撃で容易に部隊が近づけない幅数十キロの「キルゾーン」が広がり、進軍は困難になっている。 カザフスタンのトカエフ大統領やインドのモディ首相らロシアと緊密な関係を保つ国の首脳からでさえ戦争終結を求める声が出ている。 侵攻は4年半を超え、第1次大戦より長びいている。プーチン氏に現実を直視させ、停戦に応じさせるよう米国には本腰を入れてもらいたい。「冬も戦争続く」 早期終戦の道筋は見えず 米特使ら、キーウ初訪問「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません