実写映画「ルックバック」の是枝監督、「片思いできる幸せ満喫を」2026年8月31日 20時00分斎藤徹印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
[PR]
東北芸術工科大学(山形市)出身の漫画家、藤本タツキさんの作品「ルックバック」を是枝裕和監督が実写映画化した。9月11日の公開を前に、芸工大で中山ダイスケ学長と対談した。映画制作をめぐる秘話を披露し、未来のクリエーターたちにエールを送った。 「ルックバック」は、小学生の時から4コマ漫画制作に熱中した藤野と、引きこもりだった同級生の京本という2人の女の子が主人公の読み切り漫画。「少年ジャンプ+」で2021年に公開されると大きな反響を呼んだ。24年に劇場アニメ化され、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受けた。 実写映画は、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドール受賞作「万引き家族」などで知られる是枝さんが監督・脚本・編集を手がけた。25年から藤本さんの故郷の秋田県にかほ市で撮影され、芸工大でもロケが行われた。 映画制作は、新型コロナウイルスで外出自粛が求められていた時に、書店で平積みされていた単行本を是枝さんが偶然手に取ったことがきっかけという。 「映画が『不要不急』になり制作がストップしたり映画館が閉鎖されたりしている中、『なぜ僕は映画を作るんだろう』と問い直している時に出会い、作品に背中を押されたというか、叱咤(しった)された感じがした」 その後、藤本さんに会う機会があった。「ベテランアシスタントさんがペンで迷いなく引く『シャッ』という音がかっこいいんですよね」と藤本さんから言われ、漫画を書くときのペンの音を効果的に使えば「実写で勝負ができる」と直感したという。 2人の女子が一生懸命に漫画を描いている背中の美しさと、漫画を書いている時の音が変化していくさまを描くことで、時間の経過や2人の成長、そして気持ちの深まりを表現したという。 トークイベントには、芸工大で創作活動に励む多くの学生たちが参加した。映像学科で学ぶ学生からは「制作チームをうまくまとめられず悩んでいる。どうしたらうまくいくか」という質問が寄せられた。 是枝さんは「自分が面白いと思っているものをちゃんと人に伝え、独りよがりにならずに他人の意見にも耳を傾けることができるかは、本当にコミュニケーション能力の勝負。監督の資質で問われるのは、どこまで行ってもそこです」とアドバイスした。 対談の最後に、中山学長からは未来のクリエーターたちへのエールを求められた。 是枝さんは、10代の最後の時に、自分が進むべき道は映画だと気づき始めたという。 「それはもしかすると誤解だったかもしれない。『僕は映画を選んだけど映画は僕を選んでくれていないな』と思う時もあるけれど、それでも片思いなりに40年やっていると、幸せな時間もときおり訪れる。いまだに手が届かないけれど、こうやって仕事として続けられているのはとても幸せだと思う」 そして、こう呼びかけた。「何か一つ、片思いを続けられるものをその年齢で見つけられて、そこに手を伸ばしているのはとても幸せなこと。その幸せを満喫してください。それ以外のことに時間を費やすような無駄な時間は、人生ではないと思います」 対談を聞いたグラフィックデザイン科1年の河村篤輝さん(18)は「言葉は少なかったけど、映画にかける情熱がすごく伝わってきて刺激になりました」、映像学科3年の清野壱童さん(21)は「僕も片思いを続けて、憧れの是枝監督に近づけるよう頑張りたい」と話した。 実写映画「ルックバック」は9月11日から全国で公開される。県内でもフォーラム山形やムービーオンやまがたなどで上映予定。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






