【動画】横浜市中区にある「間門湯」。いまも薪で湯を沸かしている=岡崎祐仁撮影

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市道沿いの住宅街にひときわ高い煙突が突き出ている。横浜市中区本牧間門に、薪で湯を沸かす銭湯「間門(まかど)湯」がある。 のれんをくぐり、戸を開けると番台に座る沢井和子さん(91)が迎えてくれる。「いらっしゃいませ」 屋根の高い宮造りで、湯気で脱衣場も暖かい。男湯の脱衣所のロッカーの上には、常連客の洗面道具やタオルが入ったかごが並んでいる。浴場の入り口の上には「せっけんを洗い落としてから浴そうに入りましょう。」などの決まりごとが書かれていた。 浴場の床はタイルで、プラスチック製の黄色い風呂いすに座って体を洗う。女湯の壁には西伊豆、男湯の壁には瀬戸内海をイメージしたペンキ絵が描かれている。脱衣所と浴場の間には木枠のガラス戸があり、番台からも浴場の様子がわかる。 沢井さんは東京都生まれ。市内の別の銭湯で働いていた夫と結婚して、2人で「間門湯」を継いだ。 以来65年間、番台に座ってきた。客がのぼせていないか確認するのが大事な仕事だ。「健康を維持するのにはお風呂が一番。みなさんが元気でいられるように、できるだけ続けていきたい」という。「防空壕出たらお風呂屋があった」 沢井さんによると、1937年に建物が完成して、戦前の41年から営業している。建物の骨組みは当時からのもので、45年の横浜大空襲では災禍を免れた。客からは「防空壕(ごう)から出たらお風呂屋さんがあった」と聞いたことがある。 戦後は、アメリカ兵の子どもたちが、隣の建物の屋根から銭湯をのぞきに来たこともあった。沢井さんは「めずらしいものだったんでしょう。よく怒っていた」と振り返る。薪は横浜港へ買い出しに 夫が亡くなり、現在は次男と湯を守っている。 間門湯は薪風呂だ。開店に向けて、次男が午前7時ごろから湯を沸かし始める。火が消えないように薪をくべて湯を44度ほどに調整する。 薪は、使われなくなった船積みの梱包用の木を利用する。横浜港への買い出しも次男が担う。乾燥していて、煙がほとんど出ないという。常連客「お湯がやわらかい」 小学3年生から間門湯に通っている男性(70)は、薪風呂なので「お湯がやわらかい」と話す。ガスや電気で温めた風呂とは湯の質が違うという。 1960年代には脱衣所の壁を埋めるように映画のポスターが貼られていたのを覚えている。男性は「(当時は)入湯料が15円だったよね」と、沢井さんに話しかける。今でも週に3回、一番風呂を目当てに通い続けている。 お風呂から出てくると、沢井さんが座る番台に小銭を置いて、冷蔵庫から飲み物をとる客がいた。一番人気はコーヒー牛乳。扇風機の風に当たったり、テーブルに座って新聞を読んだりと、風呂あがりの時間を思い思いに過ごしていた。毎日同じ時間帯に通っている人が多いという。 沢井さんは、毎日の客とのちょっとした会話が楽しみだ。「お湯がよかったよ。お風呂に入って元気になった」と言われることが励みになっている。 「ど~も。ありがとうございました」。沢井さんが客の背中に声をかけた。 <間門湯> 営業時間は午後4時~9時。土曜日定休。横浜市営バス「東福院前」から徒歩1分。提携する駐車場が2台分ある(1時間無料)。