見る者が見られるトニー・アウスラーさん大個展 科学や心霊、陰謀論2026年8月25日 14時00分田中ゑれ奈印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

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アメリカのマルチメディアアーティスト、トニー・アウスラーさん(1957年生まれ)の日本初の大規模個展が、東京・虎ノ門の「TOKYO NODE」で開かれている。映像や彫刻、光や言葉を組み合わせた没入型のインスタレーションは、科学や心霊、超常現象に関する長年の探求の成果でもある。 巨大な眼球の群れが暗闇に浮かぶ、代表作の一つ「スペキュラー」。球体に投影された目の映像に、月面着陸捏造(ねつぞう)説やイルミナティ、新型コロナに関する陰謀論などのイメージが重ねられている。鑑賞者は見ると同時に見られる者でもあり、彼らがスマートフォンで撮影する画像はSNSを通してさらに多くの「目」に映ることになる。 アウスラーさんは、映像を立体物に投影することで「スクリーンから解放した」美術家として知られる。1993年のインスタレーション「プライベート」では、顔部分が実写映像になった布の人形が、不気味な監視カメラとともに登場。89年の立体作品「ケポン・ドラム」では、農薬がもたらした深刻な環境破壊の歴史が、液体を模したガラスに映されている。 監視社会の息苦しさやテクノロジーへの不信は、スピリチュアリズムやオカルトの土壌にもなるだろう。現代魔女や心霊主義、UFOといった、科学や伝統宗教の主流とは一線を画すテーマが、本展ではいくつも提示される。 「穴から吊(つ)り上げられて」は、米国の無神論者が牧師との口論をきっかけに起こした捏造事件「カーディフの巨人」に着想した近作。生成AIの手が加わるうさんくさい映像が、ビジネスと結びつくフェイクニュースの手口を暗示する。 主流なるものへの妄信と不信、神秘への接近と嘲笑は相反する態度に見えて、その実、自分に都合の良い情報を取捨選択した結果なのではないか。豊かな森のイメージの中に空想上の怪物が見え隠れする新作インスタレーション「キメラ」を見ていると、そんな疑念も頭をもたげる。 「芸術は鑑賞者をもってして完成される」とアウスラーさん。自分はどんな情報、どんな思想の「キメラ」なのか。地上45階に浮かぶギャラリーで、足元が少し危うく感じられる。 ▽「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」展は9月27日まで。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人田中ゑれ奈文化部専門・関心分野美術、ファッション、ジェンダー関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする