今こそ装飾する魂 縄文土器からケルト文化まで 青森県立美術館2026年8月25日 13時00分編集委員・大西若人印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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日本美術の特質の一つとしてしばしば、「かざり」や装飾性が指摘される。その中にあって、開館20周年の青森県立美術館で開かれている「装飾する魂」展はなんと、青森の縄文土器の文様とアイルランドの古代遺跡の石に刻まれた文様の近さを指摘する。壮大なスケールの発想で、人はなぜ装飾するのかと問いかけている。木版画の風間サチコ、油彩画に挑戦 青森の景色に重ねたロマン主義 展覧会は、「ユーロ=アジア世界(ユーラシア大陸)」の西の極に位置するアイルランドなどで展開されたケルト文化の、渦巻き文様などをあしらった装飾写本(6~9世紀)の図像の展示から始まる。 一方、東の極の青森の地に立つ県立美術館は、世界遺産でもある縄文期の三内丸山遺跡に隣接する。その土器の表面にも縄目や渦巻きの文様が施されている。 同館の高橋しげみ学芸員は「彼らは何を考え文様を刻んだのか、という単純だが深い問いに答えようとした展覧会」と説明。ユーラシア大陸を挟む両者を含め、その間にある北方民族や中央アジアの装飾文化を、土器や版画、装束、人形などの約220点を通し、8章だてで検証する試みだ。 装飾やかざりは、禁欲的なモダニズムの美意識のなかでは、余剰や付加的なものと見られがちだった。ケルト文化や装飾に詳しい、今展の監修者、鶴岡真弓・多摩美術大名誉教授も「ポストモダンまでは、装飾は表面を覆う余剰、地と図でいえば、二次的な図とみられてきた」としつつ、装飾の起源として「死者に花を手向け、再生を願う行為」を挙げる。青森で、アイルランドで 今展の装飾の中で、何度も登場するのが渦巻き文様だ。ケルトの装飾写本にも表現されているし、第5章に登場する、青森を含む東日本出土の縄文中期・後期の土器や土偶の渦巻きと、紀元前3200年~紀元後100年ごろとされる先史アイルランド文明の聖地の石に刻まれた渦巻きは、とてもよく似ている。 北東アジアと中央ユーラシアの美術工芸品を紹介する第3章に並ぶ装束は、ぐっとカラフル。ロシア沿海州やアムール川流域のナナイの人々の花嫁衣装もその一つだが、美しい刺繡(ししゅう)で、やはり渦巻き状の文様が描き出されている。 そして青森といえば、棟方志功。その「板画」に登場する神々の装束にも渦巻き文様がある。棟方は実はケルトの文様から刺激を受けていたのだという。 渦巻き文様は、交流や伝播(でんぱ)が想像できるものがあれば、地理的に隔絶しているものもある。鶴岡さんは取材に「普遍的な文様と言ってもいいかもしれない」と話し、その起源として「北方文化特有の、躍動する動物のうねる体」を挙げる。もっと南方の文化の、ブドウなどの植物に由来するものとは異なるというのだ。 「北方の人々は動物と共に生き、殺して食べさせてもらったために、リスペクトもあった。生命の循環に敏感だったのではないか」。その思いが、渦巻き文様に表れているというのだ。この展示をいま見る意味は? こうした表現が、展示室にしっくりと収まる。文様でつながっていることに加え、建築家の青木淳さんによる美術館建築は、遺跡発掘の際のトレンチ(溝)に着想を得た土壁の展示室を持っているためでもある。 ねぶた師の竹浪比呂央さんによる、装飾性豊かな新作ねぶたで締めくくられている同展を、いま見る意味はどこにあるのか。 高橋学芸員は「土着的なものの世界性、普遍性を感じてほしい」、鶴岡さんは「今の時代、誰かが全体を統治しているが、装飾に主従はない」と話し、装飾する魂を取り戻す重要性を唱えていた。 人はなぜ装飾するのか。ユーラシア大陸の東の端から西の端までを視野に入れ、検証する展覧会が青森で開催中だ。 ▽「装飾する魂 ユーロ=アジア世界をつなぐ文様の宇宙―縄文、ケルトから、ねぶたまで」展は9月27日まで。8月31日、9月14日休館。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする






