【社説】首相「行き過ぎた緊縮断つ」と予算編成 天井が抜ける危うさ2026年8月20日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●高市首相は政府の予算編成のあり方を見直し、2027年度を「責任ある積極財政元年」と意気込む●だが、主要政策の財源の議論は先送りされ、財政規律を軽んじる雰囲気が広がる●金融市場は警戒を強める。財源の裏付けなき政策は、国民の期待を失望に、市場の疑念を不信に変えるリスクをはらむ

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2027年度の政府の予算編成作業は、各省庁が必要な費用を提出する8月末の概算要求から本格化する。高市早苗首相は大型の補正予算に依存する慣習から「脱却」し、予算編成のあり方を抜本的に見直す方針で、「責任ある積極財政元年」と意気込む。 だが、財源の議論に踏み込まずに先送りする政権の姿勢に、金融市場は警戒を強める。いずれも兆円単位の巨費を要する成長戦略、防衛費の増額、食品の消費税減税の実現を前に、政権全体に財政規律を軽んじる雰囲気が広がっていることを危惧する。財源の議論に踏み込まず 概算要求では、首相肝いりの「強く豊かな日本」投資枠で、各省庁の予算要求に上限を設けなかった。歴代の政権は、金額を示さずに事業の項目名だけを記す「事項要求」を認めてきたが、予算の要求額を一定程度抑える「シーリング(天井)」は維持してきた。だが、査定を担う片山さつき財務相も首相も、「もはやシーリングと呼ぶべきものはない」と語る。 40年度までに官民で370兆円超を投じる成長戦略は、「行き過ぎた緊縮志向の流れを断つ」という首相の考えがある。毎年10兆円の追加支出を想定し、重要な分野は複数年の計画に基づき別に予算を確保する。近年は十数兆円規模だった秋の補正予算から、振り替えることなどを描く。 防衛費では、防衛省が過去最大となる約8.9兆円を要求する方針を固めた。年末までに予定する安全保障関連3文書の改定では防衛費の増額を打ち出す方針で、さらにふくらむことは必至だ。食品消費税の減税も年約5兆円かかる財源を決める前に、27年4月から実施する法律を先に成立させる方向で準備が進む。金利の警鐘 約30年ぶりの高水準 積極財政路線を強める姿勢も一因となり、政権発足時に1.6%台だった長期金利は一時、2.9%台まで上がり、約30年ぶりの高水準で推移する。金利の上昇は、国債の発行や返済にあてる費用がふくらむ悪循環となり、暮らしや企業活動に負担増を及ぼす恐れもある。歳出の3分の1を占める社会保障費は効率化にどこまで切り込めるかが焦点となるが、少子高齢化で大きく抑えることは難しい。 予算編成は要求以上に、一つ一つの政策の優先順位や費用対効果も踏まえた査定の積み上げと、政治判断の透明性が重要だ。財源の裏付けなき政策は、国民の期待を失望に、市場の疑念を不信に変えるリスクをはらむ。財政を運営する責任と積極財政のバランスを著しく欠いた危うい姿勢は、一刻も早く改めなければならない。防衛費、過去最大8.9兆円を概算要求へ 実際額さらに膨らむ見通し「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする