【社説】財政規律見直しという「危うい賭け」 高市政権に市場が警鐘2026年7月6日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの記事のポイント●高市政権が示した新たな経済財政運営の基本方針の原案に、金融市場が警鐘を鳴らしている●財政規律は、権力者が野放図な財政運営をできないよう縛るためのもの。しかし、二つの重要な記述が首相の意向で見直された●財政規律をさらに緩め、国民生活や日本経済をリスクにさらす危うい賭けだ

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高市政権が新たな経済財政運営の基本方針の原案を示した後、長期金利は約30年ぶりの高水準となる2.81%をつけ、6日も一時2.83%に上昇した。成長戦略など兆円単位の歳出拡大に比重を置き、国際的にも緩い財政規律をさらに緩める方針に、金融市場が改めて警鐘を鳴らした。 高市早苗首相は、財政規律をないがしろにする危うい賭けは、すべきでない。閣議決定の前に再考が必要だ。首相の意向で二つの見直し 長期金利は昨秋の政権発足以降、右肩上がりで、2%台を大きく上回る水準で推移する。そこへ、6月30日公表の「骨太の方針」の原案では、政府が骨太を初めて作った2001年からあった財政に関する二つの重要な記述が首相の意向で見直された。 一つは財政「健全化」の言葉が消えたこと、もう一つは早期黒字化を目指した「基礎的財政収支」の目標を事実上取り下げたことだ。 新たに財政運営の中核となる目標に「国・地方の総債務残高対GDP比の安定的引き下げ」を据えた。基礎的財政収支は「債務残高対GDP比の低下に向け確認する指標」とし、複数年度で管理する。「『強い経済』の構築と『財政の持続可能性』をバランスよく実現」できると描く。 財政規律は、権力者が野放図な財政運営ができないよう縛るものだ。見直しで財政支出の制約となる収支目標から、成長を前提に債務残高比目標に軸足を移す。多くの先進国はこの二つを目標・ルールとして組み合わせ、市場の信認を保とうとしている。 高市政権は官民で370兆円超を投じる成長戦略と、食品消費税の減税、防衛力強化を同時に進める考えだ。 規律見直しの狙いが、ここにあることは明白だ。日本銀行の金融政策について「『強い経済』の実現に向けて適切な運営が重要」とした記述も利上げへの牽制(けんせい)ととられ、金利の上昇要因になった。国民生活にも及ぶリスク 同じく財政拡大路線を掲げた第2次安倍政権は、収支目標の時期を先送りしたが、取り下げることはしなかった。今回、自民党内で激しい議論をした形跡は見られない。支持率が高い首相への遠慮なのか、政府、与党とも財政運営への緊張感が著しく欠ける。 財源を示さない大規模な減税策などを22年に打ち出した英国のトラス首相は、金利の急騰を制御できず、通貨安、株安を招き、辞任した。 日本の財政規律は先進国の中で緩く、財政は最悪水準にある。「責任ある積極財政」の言葉のもと、国民生活や日本経済をリスクにさらすことは慎んでほしい。魔法の言葉「責任ある積極財政」 国内外から相次ぐ警鐘、その内実は「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません