インタビューピケティ氏が語る繁栄共有への道 富の集中は進むが「今も楽観」聞き手・寺西和男印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

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富める者に、より富が集中する構造を描き、世界的ベストセラーとなった「21世紀の資本」の刊行から10年あまり。不平等の是正に向けた世界の動きは鈍く、むしろ格差の拡大が指摘されている。それでもフランスの経済学者トマ・ピケティさんは「楽観している」という。社会正義の実現に向けて提唱する、新たな道筋とは。「力の集中」と搾取主義的なイデオロギー ――「21世紀の資本」を2013年に刊行して以降の世界の不平等の状況を、どうみていますか。 「ある意味で悪化しています。特に、最上位層への富の集中が10年前より進んでいます。本の執筆当時、(米IT大手マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツ氏のような富裕層の資産は、数百億ドル程度でした。それが今では、(米電気自動車大手テスラ経営者の)イーロン・マスク氏のような『トリリオネア(兆万長者)』が現れています」 「私は『21世紀の資本』で、富裕層に富が集中するのは、(不動産や株式などの)資本収益率が経済成長率を上回るからだと指摘しました。実際、過去10~15年の富裕層の資産の増加は、世界の経済成長をはるかに上回っています」 ――男女間の所得格差の是正ペースも緩やかです。 「進展は信じられないほど遅いです。女性は依然として家事労働の大部分を担っています。家事労働を考慮に入れると、どの国でも女性が男性より多く働いています。結果として、男女間の総労働時間の不平等は依然として非常に大きく、場合によっては拡大しているところすらあります。(世界の資産保有者の)上位1%は圧倒的に男性で占められています。所得の不平等を縮小することは、より一層のジェンダー平等を実現するための前提条件です」 ――不平等を拡大させている要因は何でしょうか。 「一握りの層が富を握ると、経済力や金融力の集中につながり、さらなる富の集中を招きます。その根底には、政治的な影響力の不平等があります。つまり非常に裕福であれば、好条件の政府の契約や自分に有利な税制を求める政治キャンペーンやロビー活動に、資金を提供できます。実際、億万長者たちは(保有資産や所得に対して)わずかな税金しか支払っておらず、莫大(ばくだい)な富を蓄積するのは容易になります」 ――あなたが率いる世界不平等研究所の試算では、最も裕福な上位0.001%の人が持つ富は、世界人口の半数が持つ富の3倍にも上り、不平等の状況は深刻です。 「億万長者たちが、持続可能な未来に向けた投資を正しく選択しているなら、そこまで悪いことではないかもしれません。しかし今日、(IT大手の経営者ら)いわゆるテクノ億万長者や、米トランプ政権にみられる(自国が優位に立つための保護主義的な技術・産業政策を志向する)『テクノ・ナショナリスト』のイデオロギーによって推進される開発モデルは、環境や社会の課題に応えていません。それはたとえば至る所にデータセンターを建設するものです。マテリアル・フットプリント(資源採掘量)は増え続け、多くのエネルギーも必要とします」 「行き着くのは、世界というパイから自分たちの分け前を確保しようという考え方です。これには、他国や外国人に対する極めて過激な言説が伴います。貧しい人々への社会的配慮も、極めて乏しい。この搾取主義的なイデオロギーは機能しないでしょう。我々は別の道筋、開発モデルを考える必要があります」衰退した努力神話と自己責任論 ハックとチートの時代、救いと危うさ社会吸い尽くす富豪「まるでブラックホール」敏腕トレーダーの格差論 ――どんな代替モデルを考えているのでしょうか。 「(途上国中心の)グローバ…この記事は有料記事です。残り3436文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません