2026年8月15日 17時00分福冨旅史 工藤隆治印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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全壊した家屋を前に、笑顔でピースサインをする一人の男性――。熊本地震の被災者の男性(71)の偽写真がSNS上で拡散された。男性が被災後に取材を受けた際の写真が生成AI(人工知能)を使って加工されたとみられ、男性は「人の暮らしを何だと思っているのか」と憤る。取材を受けたら「変な写真が…」 最大震度7を観測した熊本県氷川町。男性宅は築90年以上で、7月28日の地震で1階が完全に崩れた。男性は外出していて無事だったが、自宅1階にいた弟(69)はがれきに右腕をはさまれてしばらく身動きがとれなくなり、近所の人たちに助け出された。翌29日に毎日新聞から取材を受け、自宅前でたたずむ写真とともにネットで記事が公開された。 数日後の8月上旬、離れて暮らす次女が「変な写真が拡散している」と電話をかけてきた。近所の知人にスマートフォンを見せてもらうと、両手でピースサインをつくる自身の写真がX(旧ツイッター)で出回っていた。全壊した自宅や服装は元の写真のままだが、自分の表情やポーズが変えられていた。写真は「もっと沢山被害出たらいいのになぁ」「熊本民の奴らタダで飯食ってるんじゃねーよ」というコメントとともに投稿されていた。 男性は「自分が写っているのが信じられなかった」。顔も名前も知らない誰かに「おもちゃ」にされたように感じ、ショックを受けたという。 今回の地震では近所の女性2人が犠牲になった。散歩のたびにあいさつする間柄だ。ある日突然、自宅や知人を失うほどの被害が出た災害なのに、そんな被災地を笑いものにしたかのような偽画像は「自分だけではなく、地域全体を侮辱している」と思えた。投稿主を特定してもらおうと、熊本県警八代署に被害届を出した。 さらに最近になって、男性が自宅前で舌を出しているように加工された写真がXで出回っていると知った。構図は前回の偽画像とほぼ同じだ。投稿には「俺も試しにやってみたけどなかなか面白いやん」と書かれていた。 全国のボランティアや家族が駆けつけてくれるおかげで前向きな気持ちになりつつあるのに、またげんなりした。 「どういう気持ちでやっているのか分からんばってんが、人の暮らしや命をなんだと思っているのか」毎日新聞社「法的措置も検討」 毎日新聞社によると、出回っている写真は毎日新聞デジタルに掲載された写真を改変したものである可能性が極めて高いという。外部からの指摘で事態を把握したといい、同社社長室広報ユニットは「こうした改変は当社の著作権を侵害する行為である上、被災者の尊厳を傷つけるものです。極めて遺憾と考えており、法的措置も視野に対応を検討しています」としている。 災害に乗じた偽画像の拡散はこれまでにも繰り返されている。 10年前の熊本地震では、動物園からライオンが放たれたという偽画像を投稿したとして、偽計業務妨害容疑で男性が逮捕された(その後起訴猶予処分)。被災者に追い打ち 識者は「見ても静観を」 ただでさえつらい環境を強いられる被災者が、偽画像によってさらに苦しめられることにもなる。総務省の違法有害情報対策ワーキンググループのメンバーを務めた清水陽平弁護士によると、今回の偽画像は生成AIで加工して作られたとみられ、影の濃さや向きなどが精巧な印象だという。画像についたコメントと合わせ、男性の社会的評価を下げるものとして侮辱罪に当たる可能性があり、肖像権の侵害にもなりうるという。 こうした投稿には、面白半分で注目を浴びたいという動機のほか、閲覧数を稼いで収益化する目的もあると考えられる。「災害は社会の注目が集まりやすく、それに乗じた投稿が起きうる」と指摘する。 偽画像を目にしたらどうすればいいのか。「『これはデマ』などと反応したくなっても、静観することが大切。反応すれば閲覧数が増え、偽情報を投稿する人を喜ばせてしまうだけだ」有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






