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避難生活の中で少しでも健康を保って過ごすために、食事は大切です。普段の食事環境が整わないなかで、体力が落ちやすい高齢者の食事をどうしたらよいのか。管理栄養士として長年、災害時の支援にあたってきた日本栄養大の久保彰子准教授に聞きました。野菜やビタミン類不足で便秘、口内炎に ――熊本県の管理栄養士として、10年前の熊本地震や豪雨災害の際に、食の支援にあたってこられました。被災者からどのような食の悩みを聞きましたか。 避難所の食事では、どうしても野菜やビタミン類が不足します。そのため、高齢者に限らず、「便秘になった」「口内炎ができた」という訴えをよく聞きました。そうした時には行政に働きかけて、発注するお弁当に野菜のおかずを増やしてもらったり、野菜ジュースを付けてもらったりしました。 また、災害時にはトイレ環境が悪くなります。そうすると、普段からトイレに行く回数が多い高齢者は、何度もトイレに行くのを避けようと水分を控えるようになり、便秘や脱水症状を起こしがちです。必ず水分はとってくださいとお伝えしていました。真夏の被災地、つらいトイレ問題 臭い、衛生、慣れない処理…対策はご飯が「冷めてかたい」→少量の水や湯を混ぜて ――避難生活の食事でどのようなことに気をつけたらよいでしょう。 これもお年寄りに限りませんが、発災直後は食料確保が最優先。まずはエネルギーをしっかりとることが大事です。時間が経つと支援も進むので、おかずでたんぱく質やビタミン、ミネラルをとっていくという流れになります。 高齢者は食事が不十分な状態が続くと体力が低下しやすく、疾患を持っている人も多いため災害関連死につながりかねません。 唾液(だえき)の分泌が若い時に比べて少なくなるため、水分があった方が飲み込みやすくなります。水分をとるためにも、なるべく汁物をとりたいです。 かたいものが食べにくい方もいらっしゃると思います。お弁当のご飯が冷めてかたければ、お湯や水を少しかけて混ぜてみてください。そのまま食べるより、ずいぶん食べやすくなります。おかずなら、ポリ袋に入れて、お湯や水を少し足してもみ、やわらかくすることもできます。 ――食欲がないときにはどうすればいいでしょうか。 市販されているゼリータイプの飲料や汁物など、食べやすいものから試してみてください。3度の食事にこだわらなくてよいので、食べられるときに補給しましょう。好きなおかずを備蓄 ――災害の報道に接して、被災地の外に住む人が自宅の備えを見直す場合、どのような食料の備蓄をすすめますか。 おかずを意識してください。自治体の備蓄には、たいがいアルファ化米のような主食があります。 自分の好きなレトルトや缶詰で構いません。イワシやサバ、焼き鳥ならたんぱく質をとることができます。汁物があると食事が進みやすいので、即席のみそ汁やスープもあるとよいでしょう。 高野豆腐や切り干し大根といった乾物もよいですし、フルーツの缶詰やドライフルーツで食物繊維やビタミンを補うこともできます。日頃から食べて買い足すことをおすすめします。 また、熱源があれば加熱調理ができ、災害時でも食事の幅が広がります。カセットコンロは持っておきたいです。 ――介護が必要な高齢者がいる家庭で特に必要な備えはありますか。 嚥下(えんげ)食のような、かむ力やのみ込む力の弱い高齢者用の食事は、避難所ではすぐに準備できるとは限りません。普段から「刻み食」や嚥下食を利用している場合は、やわらかさを調整したレトルトのおかずやおかゆを用意しておくと安心です。スーパーやドラッグストアで手に入ります。 おかゆに添える梅干しやのりのつくだ煮、ふりかけがあれば、食欲がないときに助かります。 くぼ・あきこ 専門は公衆栄養学、災害栄養。1996年に熊本県庁入庁。管理栄養士として勤務した25年間に、2016年の熊本地震や豪雨による球磨川氾濫(はんらん)など4度の大きな災害が発生、食の支援に携わった。21年4月から女子栄養大(現・日本栄養大)准教授。【災害時の高齢者の食事で気をつけたいこと】・脱水や便秘を防ぐためにも水分は必ずとる・食欲がないときにはゼリータイプの飲料や汁物などのどを通りやすいものを・ご飯が冷めてかたければ、お湯や水をかけて混ぜると食べやすくなる・おかずはポリ袋に入れてお湯や水と一緒にもんでやわらかくする(久保彰子・日本栄養大准教授による)