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熊本県を震源とする最大震度7の地震が起きました。停電や断水など生活に大きな影響が出ています。猛暑の中、避難所などで気を付ける点や、役に立つ命を守るための情報をまとめました。目次(1)災害時は熱中症に注意 こまめな水分補給、車中泊は日陰で(2)狭い避難所、車中泊 エコノミークラス症候群に注意(3)避難所の食中毒防ぐため 「食べ残しは思い切って捨てる」(4)夏の断水、くんだ水はいつまで飲める? 直射日光避け、密閉を(5)災害時に役立つカセットボンベ・携帯発電機 正しく使って事故回避(6)「屋根の瓦がずれている」 自然災害に便乗した悪質商法に注意(1)災害時は熱中症に注意 こまめな水分補給、車中泊は日陰で 夏の暑い時期の災害では、避難生活を送るうちに熱中症になり、命を落とす恐れがある。予防や対策は、どのような点に注意すればよいのか。 一般社団法人・熱中症総合研究所所長で、救急医学が専門の三宅康史医師は、災害時は熱中症になりやすい要因が多くあるとして、注意を呼びかける。 「停電や断水が起きて普段のように温度や湿度の管理ができない、トイレに行きにくく水分補給を控えがちになる、精神的なストレスや不眠、食事が取れないことによって自律神経が乱れやすい」といったことを要因に挙げる。 熱中症予防や応急処置では、①水分を取る②冷やす③安静にする④助けを呼ぶ、の4点が重要という。 停電や断水が続くとき、特に熱中症リスクの高い高齢者は「停電していない避難所、遠方の親戚宅などに一時的に身を寄せることなども選択肢」と話す。 車中避難をする場合は、車内は乾燥しやすく、外に出たときの温度差も激しくなる。水分補給を特に心がけ、エアコンを止めると車内温度は上がりやすいので、安全を確保したうえで日陰に駐車するようにしてほしいとする。エコノミークラス症候群には注意が必要だ。 エアコンが使えない場所にしかいられないときは、水でぬらしたタオルを体にかけ、うちわで風をあてるなどして体温を下げる方法があるという。後片付け、日中の暑い時間帯は避けて 日本医科大の横堀将司教授(救急医学)は「酷暑のなかでの避難生活になり、災害関連死をいかに防ぐかがきわめて重要だ」と話す。 避難所では、トイレに行く回数を減らそうとして水分補給を控える人もいるが、のどが渇く前にこまめに水分補給することが大切だという。 自宅で過ごす場合も注意が必要だ。日中はなるべく涼しい服を着て、水が使える場合は手や足など体の一部を水につける。地震後は家の片付けなどの作業が発生することが多いが、体が暑さや運動に慣れていない状況ではその作業自体が熱中症のリスクになる。日中の暑い時間帯は作業を中断するなどの対策が大切だ。 一般的に子どもや高齢者は体温を調節する機能が十分でなく、熱中症のリスクが高い。糖尿病のある人や、高血圧、心不全などで利尿作用のある薬を使っている人は脱水になりやすく、注意が必要だ。心不全などで心機能が低下している人の場合、体温を下げるために必要な皮膚への血流を十分に増やしにくいことも、熱中症のリスクを高めるという。気づきにくい熱中症 尿の色に注意、判定アプリも 熱中症では、本人が重症化に気づきにくいことも注意点という。日本医科大学と国立環境研究所のグループが開発したアプリ(https://heatstroke.app/)は、簡単な質問に答えることで重症度を判定できる。重症度に応じ、救急車を呼ぶ必要があるかといった対処法も案内する。 「熱中症は予防できる災害と言われている。できる限りの対策を講じ、重症化を防いでほしい」と横堀さんは強調する。 避難所・避難生活学会常任理事の植田信策・日本赤十字社医療事業推進本部参事監は、「ふだんより尿の量が少ない、尿の色が濃いときは要注意」と指摘する。とくに麦茶のような濃い茶色の尿が出たら脱水を起こしている可能性があるという。 冷たい水を飲み、経口補水液や塩あめなどで塩分をとるなどしても頭痛や体のだるさが続く場合は医療機関を受診してほしいという。 意識障害などが出て救急車を呼ぶような状況では、救急車が到着するまでの間、涼しい場所に移動し、できるだけ体温を下げるよう努めてほしいという。 体育館での避難では「屋根からの放射熱に注意してほしい」と植田さん。簡易のクーラーが設置されていても放射熱で体育館内の温度がかなり高くなることがあるとし、「校舎のうち、屋根からの放射熱の影響を直接に受けない階の教室で窓を開けて風通しをよくするといった対処法も考えてほしい」と指摘する。(2)狭い避難所、車中泊 エコノミークラス症候群に注意 狭い避難所暮らしや車中泊が続くことで、エコノミークラス症候群(肺塞栓(そくせん)症など)になる危険が高まる。 エコノミークラス症候群とは、同じ姿勢を長時間続けることで足の血管に血栓ができる病気。血栓が肺の血管に移動し、血管がつまると、呼吸困難や激しい胸の痛みを起こし、死に至ることもある。 新潟大の榛沢(はんざわ)和彦特任教授(心臓血管外科)は、今後1週間から10日はエコノミークラス症候群による災害関連死のリスクが高いと警鐘を鳴らす。 榛沢さんは「停電で冷房が使えず、車で涼むという人も多いのではないか」としたうえで、「脱水状態で寝てしまい、血栓ができてしまうこともある」と指摘する。生死を分けるのは「トイレに行ったかどうか」 寝るときは、座席をフラットにしたり、マットを置いたりして、足を上げる。水分補給と運動も欠かせない。榛沢さんは「昼間だったら2~3時間に1回、車から降りてトイレに行く。それだけでも違う」とする。 榛沢さんによると、2004年の新潟県中越地震では10日目までに、車中泊をしていた少なくとも7人が血栓が原因で命を落としたという。車中泊を1日しただけで、亡くなるケースもあった。生死を分けたのは「トイレに行ったか行かないか」だという。「トイレを我慢できる人が、車の中にずっといて、倒れてしまうことがある」と注意を促す。災害2日後に亡くなった例も 年齢かかわらずリスク 2016年の熊本地震では車中泊していた女性が本震から2日後にエコノミークラス症候群で亡くなった。日本赤十字社の植田信策さんは「どんな年代の人にもリスクがある」としたうえで、「息苦しさや胸がつまるといった症状を感じたらすぐに救急車を呼んでほしい」。 また、車中泊をするときには、一酸化炭素中毒にも注意が必要だ。車がたくさん駐車している場所でエンジンをかけたままにしていると、周りの排ガスを吸ってしまうリスクもある。榛沢さんは「ほかの車から2メートルぐらい離れた場所にとめ、エンジンはつけっぱなしにせず、換気を心がけてほしい」と呼びかける。(3)避難所で食中毒を防ぐため「食べ残しは思い切って捨てる」 2016年の熊本地震では、5月に熊本市内の避難所でおにぎりを食べた30人あまりが嘔吐(おうと)や下痢などの食中毒症状に見舞われた。市内の飲食店で調理されたおにぎりが原因の、黄色ブドウ球菌による食中毒だった。 こうした事例を受け、農林水産省はウェブサイトで避難所での食中毒を防ぐポイントを説明。避難所で食事を提供する側、出された食事を食べる側がそれぞれ注意する点をまとめている(https://www.maff.go.jp/j/syouan/saigai_syokutyuudoku.html)。主なポイントは次の通り。食事を提供する側が気をつける点・調理や食事を出す前に、せっけんなどを使って十分に手を洗う。水が確保できないときはウェットティッシュやおしぼりでしっかりふきとり、アルコール消毒をして使い捨て手袋をつける・下痢や吐き気、発熱といった症状がある人は調理や食品の配布をしない・提供する食事はできるだけ加熱し、生ものは避ける。食品には直接触れないようにして、使い捨て手袋やラップを使う。調理器具を使った後はよく洗って消毒する食べる側が気をつける点・食事前にできるだけせっけんで手を洗う。水が十分に確保できないときはウェットティッシュなどでしっかり汚れを拭き取りアルコール消毒する・賞味期限や消費期限を確認し、できるだけ早く食べる・食べ残したら思い切って捨てる(4)夏の断水、くんだ水はいつまで飲める? 直射日光避け、密閉を 熊本地震で断水している地域では、応急給水が実施されている。給水車が供給するのは水道水だ。暑い時期の水道水の保管方法などについて、日本水道協会に聞いた。 水道水は、塩素の効果で雑菌などの繁殖を抑えている。東京都水道局によると、直射日光を避けて保存すれば、常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度、飲み水として使えるとされる。 ただ、猛暑のこの時期はどうか。日本水道協会では、保存の目安は出していないものの、「気温が高いと塩素が減るのも早くなる」として、なるべく早めに使い切ることを勧める。容器に給水日を書くなどして、飲みきる目安がわかるように管理するとよいという。 長持ちさせるためには、ポリタンクやペットボトルなど衛生的なふた付き容器に、空気に触れないように、なるべく満タンにして密閉する。 被災地では、衛生的な容器を確保すること自体が難しい。飲用には、応急給水の際に配られる給水バッグにいれた水を使うのが安心という。 保管場所は冷暗所が望ましい。避難所などでも直射日光が当たらない、涼しい場所を選ぶ。車中避難をする場合も、高温になるため、車内での保管は避けたい。 また、一度容器のふたを開けて空気が入ると雑菌が繁殖しやすくなるため、開封後はなるべく早く使いきる。また、容器から直接口をつけて飲んだ場合は、だ液に含まれる雑菌が増える可能性があるため、その日のうちに使いきる。 水道水は、煮沸したり濾過(ろか)したりすると、塩素が少なくなり、雑菌などが繁殖しやすくなるため、常温保存には向かない。担当者は「そのままで、早めに使い切ってほしい」と話す。 子どもや高齢者は抵抗力が弱いので、できるだけ新しい水を使い、早めに消費することを心がける。 生活用水としては、比較的長く使うことができるが、食器洗いなど衛生面に注意が必要な場面では、飲用水と同様、早めに使うのが安心だ。(5)災害時に役立つカセットボンベ・携帯発電機 正しく使って事故回避 熊本県で起きた地震に伴い、ガスがとまったり、停電になったりしている地域もある。そんなときに役立つのがカセットボンベを使った製品や携帯発電機だが、使用方法を誤ると事故につながるため、注意が必要だ。 製品評価技術基盤機構(NITE)のまとめでは、2020~24年に起きたカセットボンベなどの製品事故は計204件。火災などによって5人が亡くなっている。 カセットボンベには、気密性を保つための「パッキン」などと呼ばれる部品が使われているが、時間の経過とともに劣化し、ガス漏れが生じる恐れがある。 日本ガス石油機器工業会は、カセットボンベは製造後、約7年以内に使い切るよう呼びかけている。製造年月日は缶底に記されている。 また、カセットコンロ自体の部品も劣化するため、製造後10年以上経過したら、買い替えを検討することも求める。製造年月は側面に貼られたシールに印字されている。 使う際にも注意が必要だ。カセットボンベが加熱されると、内部のガスが膨張し、破裂する危険性がある。カセットコンロを2台並べ、その上に1枚の鉄板をまたがせて置くことや、コンロの上に網を置き、炭の火起こしに使うのはNGだ。 カセットボンベを、コンロなどの熱源の近くや、直射日光が当たるような場所に置くのも厳禁だ。保管する際は、もともとついているキャップを忘れずにつける。 カセットボンベを燃料とする製品をテント内や車内などで使うことは避ける。周囲の可燃物に引火する恐れがある。また、狭い場所で使うと、不完全燃焼して一酸化炭素中毒になる危険もはらんでいる。 カセットボンベを捨てる際にも注意が必要だ。ガスを使い残したまま廃棄すると、ごみ収集車内などで火災が起きる恐れがある。ガスを使い切り、廃棄方法は自治体の指示に従う。容器の劣化などでガスが残ったまま使えなくなった場合は、自治体に相談する。携帯発電機 屋内での使用は厳禁 停電時に役立つ携帯発電機に関する事故も20年から24年までに21件発生。一酸化炭素中毒の事故が多く、6人が亡くなっている。 屋内や換気が悪く排ガスがこもる場所(物置、車内、テント内など)では絶対に使用しない。屋外で使用する場合でも、排ガスが屋内に入らないよう使用場所に注意し、風向きも考慮する。(6)「屋根の瓦がずれている」 自然災害に便乗した悪質商法に注意 屋根の瓦がずれているので、ブルーシートをかけてあげる――。熊本県で28日、大きな地震が起きた。自然災害発生時には、混乱に乗じた悪質商法によるトラブルが相次いでいる。過去の事例を頭に入れておき、冷静に対処したい。 各地の消費生活センターなどに2021~25年度に寄せられた地震や台風、豪雨に関連した相談内容を、国民生活センターが調べると、工事・建築や申請代行サービス、不動産貸借に関するものが多かった。 実際に寄せられた相談は次の通り。 ①地震後、屋根瓦の状態を心配していると、近くで屋根の工事をしているという業者が「瓦がずれている。応急処置としてブルーシートをかけてあげる」と訪ねてきた。修理の見積もりを頼むと、約100万円だったが20万円ほど値引きになったので依頼した。その後、工事が始まったが、見積もり内容より作業範囲が狭くなっていた。また、通常より高額な工法が採用されていることがわかった。家を建てた業者に相談したところ、怪しい点が複数あると言われた。解約したい。(70代男性) ②台風の後に「この地域は補償対象地になった。当社が申請のサポートを行っている」という電話がかかってきた。後日、担当者2人が家を見てまわり、「加入している保険会社に申請しましょう。その代行をします。保険金がおりたら、成功報酬として45%を支払ってください」と説明され、契約してしまった。よく考えると、自分で申請すれば、サポート料金は必要ない。(80代男性) ③市役所を名乗る電話がかかってきた。近隣の県で起きた災害に対する支援物資が不足し、「使っていない皿などはないか」と聞かれた。その後、「指輪なども譲ってほしい」と言い出したので断った。(70代女性) ほかにも、地震後に「分電盤が原因の火災が多数あったので取り換えた方がいい」などと迫られた例や、災害で賃貸住宅の設備に問題が起きて住めない状態なのに、家賃が減額されないといったトラブルもあった。 ※自然災害に便乗した悪質商法に注意の記事は、3月11日に朝日新聞(デジタル版)に掲載したものを再構成しました。