【社説】ネイチャーポジティブ実現へ 企業と地域の責任ある行動を2026年8月2日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●熊本市で生態系の回復を目指す「ネイチャーポジティブ」に関する国際会議が開かれた●2030年目標達成には企業の責任が大きく、環境省は調達ガイドラインを発表した●消費者も生活を見直し、生態系保護の責任を共有したい
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食卓の魚も、毎日使う水も、地域の産業も自然の恵みなくしては成り立たない。その源となる生態系が世界各地で損なわれている。持続可能な社会や経済を脅かす、私たちの命に関わる問題だ。 こうした危機感の共有から「ネイチャーポジティブ」の考え方が提唱された。生物多様性の損失を食い止め回復軌道に乗せることを意味する。2022年に国連の会議で採択された「昆明・モントリオール目標」は、30年までの実現を掲げた。日本も国家戦略に位置づけている。目標の達成を急がなければならない。 熊本市で7月15日まで開かれた「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット」には、国内外の企業や自治体、NGOなどが集い、自然資本を守りながら経済成長や投資につなげる方策を議論した。複雑な自然の回復状況をどう測るかを巡り、国際ルール作りが続く。危機意識の共有から、実行と評価の段階に移りつつあることは歓迎したい。 ただ、目標の達成は容易ではなく、とりわけ企業の責任が重い。原材料の調達から生産、販売、廃棄まで、企業活動は自然と深く結びつく。環境破壊を伴う調達を減らし、生態系への影響の情報開示が求められる。表面的な環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」を防ぐ仕組み作りも欠かせない。 環境省は、企業に環境配慮型の調達を促すガイドラインを公表した。大企業だけでなく中小企業も含めた幅広い取り組みが課題だ。先行する欧州では、原材料の調達先での森林破壊などを防ぐため、新たな規制強化が進む。自然への影響を無視したビジネスは通用しなくなりつつある。日本企業も対応を迫られる。生態系を次世代に引き継ぐ責任 サミットでは、トキの放鳥をきっかけに里山再生を進めてきた新潟県佐渡市や、東日本大震災後の復興と自然との共生を結びつけた宮城県南三陸町が取り組みを紹介した。生態系の保全が地域の魅力やブランド価値を高め、新たな産業や雇用につながる可能性を示している。先行事例から学ぶべき点は多い。 私たちも消費や暮らしのあり方を見つめ直す必要がある。環境に配慮した商品を選び、食品ロスを減らす。身近な自然を守る活動に参加することもできる。豊かな生態系を次世代へ引き継ぐ責任を共有したい。 10月にアルメニアで国連生物多様性条約締約国会議(COP17)が開かれる。国際社会が分断や対立を乗り越えて具体的な行動につなげる機会となるよう、日本政府には積極的な取り組みを求めたい。ネイチャーポジティブのサミット閉幕、「熊本宣言」で企業の行動促す「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする






