ストーリー中島隆印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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5月のとある夜。男はパソコンに向かっていた。1月に94歳で亡くなったW・Yさん(以下「彼女」)のことをつづっていく。 《彼女は、10年以上、2階から1階の急な階段を上り下りしながら、ただひたすら週2~3回のデイサービスにかよわれた》 男は室佳之さん、49歳。仕事はケアマネジャー。女性宅を月にいちど、10年あまりにわたって訪問し、ケアプランをつくってきた。数百人の最期に立ち会う 数百人の最期に向かう時間に立ちあってきた。10年以上うけもったのは彼女だけだった。 さて。 彼女はコロナ感染で入院し、まもなく、終末期状態になる。家に帰りたいという思いが強く、退院することになる。 《退院日、小生は吸い口づきの果汁ゼリーを数個、買っておいた。家に戻ってきた彼女に「飲みます?」と差し出すと、彼女は大きくうなずくや否や、すぐにかぶりついて、ゴクゴクとのみはじめ、これには家族も小生も「おぉぉ!」と声をあげた。なにしろ、数カ月禁食状態だったからである》 室さんは、川崎市の出身。大学を卒業してフリーターになる。家賃3万円のアパート暮らし。銭湯があるし、バイトをしている、ここでず~っと生きていける、と思っていた。 フリーター生活が数年たった夏。いつもなら昼間はどこかでバイトをしているのだが、その夏にかぎって仕事がなく、部屋にいた。 エアコンがない、暑すぎる。お金もない。昼間を冷房つきで無料ですごせる場所を探す。 ヘルパーの養成講座、を見つけた。避暑のため、毎日、通った。介護に本気になってきた。27歳でヘルパーをはじめた。 担当したのは、戦前から戦後を生き抜いてきた人たち。みなさんから戦地でのこと、軍隊のこと、空襲のこと……。怒りと涙、ときどき笑いの体験談を聞いた。不思議なことが重なった夜 2013年、ケアマネの資格をとる。そして彼女を受け持つことに。 さて。 病院から家に帰った彼女は…この記事は有料記事です。残り1104文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
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