2026年7月20日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●中国の南シナ海での権利を否定した仲裁判断から10年が経つが、中国は無視している●岩礁の埋め立て、軍事拠点化や周辺国への威圧で緊張が続く●ルールと対話によって平和的な解決をめざす必要がある

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南シナ海での中国の歴史的権利を否定した仲裁裁判所の判断から10年が過ぎた。その判断を中国は「拘束力のない紙くず」と切り捨て、事態は悪化している。力で既成事実を積み重ねる中国のやり方は受け入れられない。 この問題は、南シナ海域で中国と争っていたフィリピン政府が申し立てたものだ。中国は南シナ海全域を取り囲む「9段線」を引き、そこに歴史的権利があると主張した。国連海洋法条約に基づき設置された仲裁裁判所は2016年7月、判断を下して中国の権利を否定した。 これに中国は従おうとしなかった。審理中から進めていた海域内の岩礁の埋め立てと軍事拠点づくりを、いまも推し進めている。海上でのフィリピンやベトナムへの威圧も強めている。 判断から10年を機にフィリピンや日米など14カ国が共同声明を出し、適法な海洋利用、紛争の平和的解決を求めた。これに対し、中国政府は今なお「南シナ海に歴史的権利がある」と主張している。 中国は国連海洋法条約の締約国だが、海洋境界画定の争いは06年時点で裁判手続きから除外すると宣言している。だから仲裁裁判は無視していいとの言い分なのだろう。それでも、争いのある海域で一方的行動によって現状の変更を進めることは正当化できない。 そもそも「9段線」という主張がおかしい。1947年に中華民国の内政部が作った地図に記入されていたのが起源だが、公海上に線を引いても法的に意味はない。 中国の狙いは南シナ海全体を支配することだろう。軍事戦略上、戦略原潜の隠れ場所となりうる。海底資源もある。だが、南シナ海は多くの国々の船が行き交い、航行の自由が確保されなくてはならない。 争いは台湾の東側海域にまで及び始めている。今年5月に日本とフィリピンの間で海洋境界画定交渉を始めると合意したところ、中国が猛反発した。権利が重なる海域で勝手に線引きの話をするな、と言いたいようだが、3カ国以上の利害が絡む場合にまず2カ国間で交渉するのはまっとうな手順である。 台湾が関わっているところが、事態を複雑にしていることは否めない。台湾を自国の領土とみなす中国のほか、台湾みずからも交渉への関与を求めている。 国際的なルールをないがしろにせず、対話によって紛争の解決を目指す。責任ある大国として、中国がこの原則に立ち戻ることを求めたい。南シナ海仲裁判決「揺るぎない」 中国の軍事拠点化、米関与に不安も「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません