【社説】戦後初の再審法制見直し 冤罪重ねてきた反省は不十分2026年7月18日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立した●退歩の懸念はぬぐえず、問題のある規定も新設された●冤罪(えんざい)を速やかに救済するための運用が肝要で、問題があれば見直しの議論が必要だ

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再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立した。戦後初の改定は大きな一歩だが、逆に退歩につながる面もないか、懸念はぬぐえない。国家権力が冤罪(えんざい)という大きな人権侵害を重ねてきた反省が十分に生かされておらず残念だ。多くの問題点が指摘されてきた再審手続き 刑事裁判をやり直す再審の手続きをめぐっては、様々な課題が指摘されてきた。 まず証拠の問題だ。証拠は捜査機関が集め、検察はよりすぐった証拠を裁判に提出する。それを元に有罪が確定した場合、やり直しを求める側からは、無罪につながる証拠が捜査機関の元に埋もれていないかが重大関心となる。 ところが、これまでは再審における証拠開示の規定がなく、開示が不十分だったり長時間かかったりしてきた。 今回の改正では、裁判所が検察に証拠の提出を命じる制度が新設された。ただ、再審請求理由に関連し、裁判所が必要で相当と判断した場合に限られる。結果として、無罪を示す証拠が漏れる可能性は残る。運用次第では、従来、裁判官が職権で提出を検察官に勧告していた範囲にとどまるか、それよりも後退するのではないかとの指摘もある。 再審を求める側が捜査機関にある証拠に幅広くアクセスできるようにするためにも、裁判所は、新設の命令制度だけでなく、従来の勧告によっても積極的に開示を促すことが重要だ。検察も、勧告に法的拘束力がないからといって機械的に拒んではならない。 開示された証拠を、弁護人らが再審手続きなどの目的以外に使うことを一律に禁じる規定の新設も問題だ。非公開の再審請求審が、より見えにくいものになりかねない。見直しの原点、遠ざけたものは 見直しの背景には数々の冤罪事件がある。密室での「自白」強要や証拠の捏造(ねつぞう)、証拠隠しが疑われた。福井の中学生殺人事件では、無罪の決め手となった証拠の存在を複数の検察官が認識しながら声を上げず有罪判決が確定したことが、検証の結果わかった。 今回の立法を担ったのは法務省だ。問題の当事者である検察に関する事務をつかさどる官庁で、検察官が幹部を占める。法務・検察の意向を色濃く反映する立法過程をたどり、冤罪被害者らが望む姿とは程遠いものとなった。 冤罪はその人の人生を根底から破壊する。そもそも冤罪を生まない捜査・公判をどう実現し、冤罪の疑いがあればいかに速やかに救済するか。刑事司法に携わる全員が真摯(しんし)に向き合うべきテーマだ。新たな問題が出るようなら、改正法に盛り込まれた「5年ごとのあり方の検討」を待たずとも見直す議論が必要だ。再審制度、78年ぶり見直し 改正法成立、公布後3カ月以内に施行へ「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません