2026年7月14日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●防衛省が自衛隊の指揮統制に人工知能(AI)を導入する方針だ●米国製が有力候補のひとつだが、外国のシステムに依存した場合、自律性が損なわれないか懸念がある●人間の関与をどう担保するか。民主的統制のあり方も含めた議論が不可欠だ

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防衛省が自衛隊の指揮統制に人工知能(AI)を導入する方針だ。AIの活用は世界の軍事分野で急速に進んでおり、対応は避けられない。ただ、人間の関与をどう担保するのか。外国のシステムに依存した場合、自律性が損なわれないか。民主的統制のあり方を含めた議論が不可欠だ。 米軍は、米データ解析企業パランティア・テクノロジーズの「メイブン・スマート・システム」を採用している。 衛星画像や無人機映像、通信情報など、膨大なデータを素早く統合・分析し、攻撃目標の選定、最適な攻撃手段の提案などを行う。ベネズエラへの軍事行動やイラン攻撃に使われたとの報道もある。パランティア社の技術は、ウクライナのロシア軍への反撃などにも使われていると指摘される。 政府は、AIが行うのは分析や作戦立案への支援であり、最終判断は人間が行うとしている。ただ、人間がAIの判断を短時間で検証し直すことなど困難で、結局、追認することにならないか。 AIは完全無欠ではない。戦闘員と民間人を確実に識別できるのか。もっともらしく誤った回答をするハルシネーションもある。判断ミスが起きた際、なぜそうなったのかを説明できない「ブラックボックス化」の問題もある。 パランティア社のAIは、すでに自衛隊と米軍の共同演習で使われており、自衛隊が導入する場合の有力候補のひとつではあろう。 ただ、指揮統制の基盤となるシステムを、同盟国とはいえ、外国の企業に依存することになれば、他国の企業や政府の判断でサービス停止や機能制限が行われる可能性はゼロとはいえない。国防という国家主権の中核が左右されかねない。機密データを提供することによる、情報漏洩(ろうえい)への懸念も指摘される。軍事的合理性を優先する米国製が、専守防衛に基づく日本の法制と両立するかも問われる。 一方で、実戦経験も踏まえ、米国企業が蓄積する技術やデータに日本が追いつけるかは見通せない。政府・与党内では、国産システムを推す声も根強く、組み合わせて使うことや、将来的に国産に置き換える案も検討されているという。どこまでを外国に頼り、どこが譲れない一線なのか。見極めが欠かせない。 指揮統制へのAI導入は、単なる新技術の採用ではなく、防衛のあり方や国家主権にかかわる問題である。拙速は避け、利用範囲や責任の所在、人間の関与のあり方、外国依存の是非などについて、徹底した検討が求められる。自衛隊、指揮統制にAI活用 米パランティア導入を検討、国産化も「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません