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インバウンド旅行客も訪れているドラッグストア。街でたくさん見かけるようになったと思いませんか? 実は、地方発の企業も多いドラッグストアは、「キャラ」もさまざま。全国のドラッグストアの広がりを調査した記者が、業界を読み解きます。「地方発」ドラッグストアばかりドラッグストアは、売上高数千億円規模の企業が各地で激しく激突している業界です。興味深いのは、そんなつばぜり合いを日夜繰り広げている企業の多くが実は地方発というところです。「ツルハドラッグ」を運営し、ウエルシアグループ(東京都千代田区)と統合して国内最大のメガドラッグとなったツルハホールディングス(HD、札幌市)は北海道旭川市生まれ。M&A(企業合併・買収)をしないで急拡大してきた「ドラッグストアコスモス」を運営するコスモス薬品(福岡市)は宮崎県延岡市生まれです。「薬王堂」を展開する薬王堂HD(盛岡市)は、今は盛岡市となった岩手県の旧都南村(となんむら)で創業し、登記上の本店は今でも岩手県矢巾町です。中部地方からも有力な企業が次々と生まれています。「ドラッグセイムス」を運営する富士薬品(さいたま市)は富山市で、「クスリのアオキ」で知られるクスリのアオキHDは今も本社がある石川県白山市で、「ドラッグストア ゲンキー」のGenky DrugStores(福井県坂井市)は福井市でそれぞれ誕生。「V・drug」を運営する中部薬品は岐阜県多治見市で発足しました。首都圏に広がる「マツモトキヨシ」と関東・近畿に多い「ココカラファイン」は2021年に統合してマツキヨココカラ&カンパニーになりましたが、マツモトキヨシが生まれたのは千葉県松戸市です。関東・中部・関西を中心に店舗網を築く「スギ薬局」のスギHD(愛知県大府市)は、愛知県西尾市で創業しました。こうして見てみると、県庁所在地ではないところで生まれた企業がけっこう多いのです。戦国時代さながらに拡大このように各地で生まれたドラッグストアはこれまで、激しい出店競争を展開してきました。まずはそれぞれの地元で足場を固め、その後に版図を広げていきます。出店を企てる地域の市場調査を入念に行い、物流態勢を整えてここぞと踏んだら一気呵成(いっきかせい)に進出します。ツルハは北海道・東北を固めて全国へ、コスモスは本社を福岡市に移して九州から東へ。東海のスギとV・drugが北陸に向かえば、クスリのアオキは関東へ。版図を広げ、各地でぶつかり合う様はまるで戦国時代のようです。ドラッグストアは、都市部ではすぐ隣にある場合も少なくありませんが、地方でも激しくぶつかっているところがあります。福井市森田地区では、ゲンキー、クスリのアオキ、コスモスが道路を挟んですぐ向き合っています。秋田県三種(みたね)町では、田んぼばかりの一角にツルハと薬王堂が隣接して立っています。それぞれが勢力を拡大し、ついにはツルハHD、マツキヨココカラ&カンパニー、コスモス薬品、スギHDは売り上げが1兆円を超えました。1兆円というのは、イトーヨーカ堂やニトリHDを上回る規模。「1兆円クラブ」とも言われますが、まさに戦国時代の「大大名」とも言えそうです。M&Aを繰り返して…出店のペースをやや落としている企業もありますが、まだまだすさまじい勢いを保っている企業が目立ちます。例えばコスモス薬品は2025年5月期で120店舗、スギHDも2026年2月期で110店舗新規に出店しました。単に新規出店を増やすだけでなく、採算に合わなかったり手狭になったりした店舗は速やかに閉じるというスクラップ&ビルドを繰り返してきました。M&Aを積極的に行っていることも店舗数の増加につながっていますが、違う業態の企業を吸収することもよくあります。その筆頭はクスリのアオキで、各地のスーパーをどんどん傘下に収めてきました。それによって食品、クスリのアオキの場合は特に生鮮部門を強化しているわけです。スギHDは、関西で調剤薬局を展開するI&H(兵庫県芦屋市)を子会社にしました。ドラッグストア業界全体の店舗数は、日本チェーンドラッグストア協会の集計だと2000年度に579社、1万1787店舗だったのが、24年度には380社、2万3723店舗となっています(集計方法が異なるため経済産業省の商業動態統計とは異なります)。企業数が激減した一方、店舗数は大きく増えてきました。出店の基本的な戦略は、特定の地域に集中出店するドミナント戦略です。コスモス薬品は、25年5月期の決算短信で、「自社競合を厭(いと)わないドミナント出店を基本」とすると述べています。自社の店舗同士で顧客の取り合いになり、個別の店舗の収益が一時的に下がったとしても出店攻勢をかけるというわけです。すさまじい競争の一端が垣間見えるようです。【さらに深掘り】ドラッグストア2万店時代、背景を探る データで見えた最前線を歩くキャラ立ちしている各企業実は一口にドラッグストアといっても、中身は相当異なり、各社がそれぞれユニークな個性を持っています。いわば「キャラ立ち」しているようなものです。圧倒的巨人となったツルハ・ウエルシア連合、美容とヘルスに強いマツキヨココカラ&カンパニーは顧客・商品分析が緻密(ちみつ)でプライベートブランドの化粧品も人気です。スギHDは処方箋(せん)に基づいて薬剤師が薬を準備する調剤にこだわりを持ち、古くから薬剤師が患者宅に出向く在宅調剤も手がけてきました。セイムスを展開する富士薬品はもともと置き薬(配置薬)の会社です。最近は、調剤部門を併設するドラッグストアが増えてきましたが、Genky DrugStoresは調剤をやらないと割りきっています。ドラッグストアの商品は、大きく市販薬、調剤、化粧品、食料品、日用雑貨品に分かれますが、売上高に占めるこれらの割合も企業によって大きく異なるのも特徴です。食料品の割合が高いのはGenky DrugStores、コスモス薬品、クスリのアオキです。これだけキャラが違えば利益も違いそうですが、実はそうでもないのが面白いところです。商品の原価や販売経費などを除いた営業利益は各社の規模によって違いますが、売上高に占める割合である営業利益率は4~5%ぐらいのところが多く、それほど開きがありません。高い付加価値の商品には一定の販売コストがかかります。一方、それほど利益が上がらない食品を多く扱っている企業でも、販売コストを極限まで下げることによって、結果として高い営業利益率を確保しているのです。全国スーパーマーケット協会の2026年版スーパーマーケット白書によると、2024年度の営業利益率は集計対象企業全体で2.44%でした。ドラッグストア業界の水準が高いことがわかります。そんな業界にあって、突出しているのがマツキヨココカラ&カンパニーで、2026年3月期決算によると7.6%もありました。それだけ付加価値の高いビューティー&ヘルス部門の割合が高いことを物語っています。同社は収益性を示すROA(総資産経常利益率)という指標も極めて高く、高収益体質を誇る企業といえます。拡大する事業領域規模を拡大し続けてきたドラッグストア業界ですが、業界全体で言うなら、他の小売りとして比較してもその「柔軟さ」が最大の強みであるように思えます。食品が来店の鍵を握ると思えば食品を充実させ、介護ニーズが増えてきたら直接介護事業に乗り出した企業もあります。スギHDは、世界で手荷物預かりサービスを運営するバウンスと提携し、外国人観光客らがスギの店舗に荷物を預けられるサービスを始めました。マツキヨココカラ&カンパニーのグループ企業が2024年、美容に関する口コミや人気ランキングなどを扱うメディア「LIPS」の運営会社を子会社にしたことにも驚かされました。リアルとデジタルの融合がさらに進みそうです。ユニークなのは札幌市に本社を置くサツドラHDの取り組みです。同社は売り上げの規模も店舗数もそれほど多くありませんが、「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」を掲げています。地域課題の解決を目指し、インキュベーションプラットフォーム「EZOHUB SAPPORO」を2020年に札幌市に、2024年には「EZOHUB TOKYO」を東京都品川区につくりました。シェアオフィスやコワーキングスペース、イベント会場などとして使い、ヒト・モノ・コトをつなぐことで新たな未来を創造するというものです。人口減少が続くなか、業界はすでにオーバーストア状態にあるとも言われます。生存をかけた各社の今後の戦略に注目していきたいですね。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel