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近年、参入企業が急増して群雄割拠のガチャガチャ市場。昨年には、本社を東京に置きつつ、生産拠点の中国から新たな企画を生み出す新メーカーも参入しました。このメーカーが見据えているのは「ガチャガチャの世界への展開」です。ガチャガチャ評論家のおまつさんが解説します。各社が売れる方向へ…「らしさ」とはいま、ガチャガチャ業界が大きく変化しています。20年前、メーカーは数えるほどしかありませんでした。しかし、コロナ禍以降、参入企業は急増し、現在では60社以上が商品を送り出す時代になっています。毎月のように600種類以上の新商品が市場に並び、売り場はかつてないほど多様化しています。最近では、人気商品を求めて長蛇の列ができ、購入制限が設けられるケースも出てきました。メーカーが増えた分、競争も激しくなっています。キャラクター、日用雑貨、目印チャーム、食品ミニチュア、動物フィギュア――。売れる形式が見えれば、各社がそこへ向かいます。市場が広がるほど、逆に「ガチャガチャらしさ」とは何かが問われているようにも見えます。ガチャガチャ文化を世界へその中で、「ブルーマウンテン」(本社・東京)という新しいメーカーの登場は注目に値します。ブルーマウンテンは、単に新商品を企画して売るだけの会社ではありません。代表の青山雄二さんが見ているのは、日本のガチャガチャ文化を世界へどう広げていくかという、より大きな構想です。青山さんは、「日本の次のスタンダードは、コンテンツを輸出する国だと、コロナ前ぐらいから感じていました」と語ります。アニメ、漫画、フィギュア、玩具。日本が培ってきた創造性を軸にしたコンテンツは、世界で戦っていける力を持っています。青山さんは、早くからその可能性をガチャガチャに見いだしていました。青山さんは「日本のアニメをはじめ漫画、フィギュア、おもちゃは、クリエーティビティーの部分で言えば、世界的に見てもかなりいいポジションです。そこは世界で戦っていける要素ですし、その基盤を自分が作らなければいけないと思いました」と語ります。代表も中国に拠点ガチャガチャの生産拠点の多くは中国・広東省周辺にあり、青山さん自身も中国に拠点を置きながら、企画、生産、流通、そして市場づくりを一体で考えています。日本で企画し、中国で作るという従来型の距離感ではなく、作る場所の近くで考え、現地のスピード感を取り込みながら、日本のガチャ文化を海外へ広げようとしているのです。青山さんは、「これから日本のマーケットが縮小していくことを考えると、世界全体の市場を見なければいけないと感じました」と話します。重視しているのが、企画と生産の距離を縮めること。「日本にいて中国に発注するよりも、企画する、造形するという機能自体を中国に持っていった方が建設的なのではないかと思います」ブルーマウンテンが目指しているのは、「生む」「作る」「売る」をつなげることです。母体であり、中国の深圳に拠点を置くHBT社には生産の機能があり、中国ではガチャガチャ専門店の展開も進んでいます。作ることと売ることの土台があるなら、次に必要なのは、何を生み出すのかという企画の力です。中国の「ブラインドボックス」文化を生かす中国では、「ラブブ」などのキャラクターで知られるトイメーカー「ポップマート」のように、ブラインドボックス文化(箱の中身がわからない状態で売られる)がすでに大きく成長しています。一方で、日本のガチャガチャのように、ガチャガチャの前でハンドルを回し、カプセルが落ちてくる体験そのものを楽しむ文化は、まだ育てていく余地があります。箱を買うのではなく、回す。この体験を、どうエンターテインメントとして根付かせるか。ブルーマウンテンの挑戦は、商品開発であると同時に、文化の翻訳でもあります。青山さんは中国市場について「中国にガチャガチャの文化を根付かせて、新しいマーケットを作っていきたいんです。向こうではブラインドボックスの文化が先にあります。だからこそ、ガチャガチャをどうエンターテインメント性のあるものとして広げていくかを考えています」と教えてくれました。古代中国の「兵馬俑」を商品になかでも、ブルーマウンテンの商品「ザ・兵馬俑(へいばよう)」は、象徴的な商品です。古代中国において、兵士及び馬をかたどった像で、死者の埋葬の際に一緒におさめられる「兵馬俑」。教科書で見た記憶のある人もいるでしょう。2月に発売された「ザ・兵馬俑」は、全6種が2色で展開されていて、小さなカプセルの中から、古代中国の兵士たちが現れます。商品ディスプレーには「8000体で再現可能」という一文もあり、集めれば集めるほど、机の上や棚の一角に、自分だけの兵馬俑坑ができあがっていきます。現実的に8000体を集める人は多くないかもしれませんが、それでも、その壮大さを想像させるところに、この商品の魅力があります。さらに興味深いのは、青山さんが当初、もっと「発掘品らしさ」に寄せた表現まで考えていたことです。実物の兵馬俑は、完全な状態で整然と出土するものばかりではありません。腕が欠けていたり、汚れが残っていたり、長い時間を経た痕跡があります。青山さんは「工場でできたサンプルはきれいな兵馬俑でした。本当は、腕が欠けていても商品として出したかったんです」と笑って教えてくれました。ただ最終的には問い合わせや品質面への配慮から、整った造形の商品になりました。それでも、その発想には「きれいなミニチュアを作る」だけでは終わらない視点があります。子どもの頃、ウルトラマン消しゴムやキン消しをいっぱい集めていた世代にとって、ガチャガチャは単なる所有物ではなく、遊びの入り口でした。ブルーマウンテンが「ザ・兵馬俑」で呼び戻そうとしているのは、その感覚でもあります。「売れる形式」だけでは「面白さ」痩せる現在の市場では、目印チャームのような実用性の高い商品が大きな存在感を持っています。市場全体が「売れる形式」だけに寄ってしまうと、ガチャガチャの面白さは少しずつやせていきます。何が出るか分からないから面白い。なぜこれを作ったのかと気になる。こんなものまで商品になるのかと驚く。その雑多さこそが、ガチャガチャの魅力のひとつです。「ザ・兵馬俑」は、まさにその雑多さを肯定しています。かわいさだけでも、便利さだけでもありません。歴史、造形、収集、ユーモアな発想。それらが400円のカプセルに詰め込まれています。最後に商品づくりについて尋ねると、青山さんは「消費されて終わる商品を作りたいわけではありません。長くちゃんと売っていけるものを作っていきたいんです」と語りました。ブルーマウンテンの「ザ・兵馬俑」は、新しいメーカーの名刺代わりとしてよくできています。中国を題材にし、中国と日本をつなぐ視点を持ち、日本のガチャガチャらしい遊び心で仕上げられているからです。そこには、単なる商品紹介では終わらない物語があります。 ◇この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。 ◇ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani)ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel







