インタビュー森を受け継ぐこととは カップルが探した小さな林業と山の生活の現実聞き手・松尾一郎印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする【動画】上垣喜寛さん+平井明日菜さん(森を受け継ぐカップル、上垣さんはNPO法人自伐型林業推進協会事務局長、平井さんはライター)森を受け継ぐことと森との関わり合い方について=松尾一郎撮影
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人間が入らなくなった日本の森。林野庁などのまとめによると、森林面積(2500万ヘクタール)の約6割(1500万ヘクタール)は私有林であり、その4分の1程度は所有者不明といわれています。地方の過疎化で森林所有者が現地にいなくなり、相続人も各地に分散していることが背景にあります。この現象は、個人として森を所有することの限界を示しているかもしれません。 そうすると、森を世代を超えて残していくために、森を「コモン」として管理していく考え方が浮上してきます。「森を受け継ぐこと」の理想と現実とは――。 NPO法人・自伐型林業推進協会(自伐協)の事務局長で和歌山県内の森を相続予定の上垣喜寛さん(43)と、そのパートナーで長年里山保全の活動を続けるライターの平井明日菜さん(43)に聞きました。Re:Ron森林論⑨ 上垣喜寛さんと平井明日菜さんRe:Ron「森林論」でなぜ今、「コモンの森」を考えるのか■「絶望」から始まった森を受け継ぐこと ――上垣さんが相続する紀美野町の森を案内してもらったとき、「何も知らずにこの状態を見たら絶望的になるだろうな」と言いましたね。 【上垣喜寛】 なりますよ、絶対。僕も最初は絶望しました。木が倒れていたり、風倒木になっているのを見たり。ツルがぐるぐると木に巻いているのとかを見た時、「しんどそうだな」という気持ちになります。 森を持っていると、森林組合から通知文が来ることもあります。「間伐遅れになっていませんか?」と。受け取った側に「整備しなくてはいけない」という強迫観念が植え付けられるのです。自分では整備できないから、「やってくれるのであればお願いしたい」と思ったところで、かかる費用のことを考えてしまう。先祖が植えた森なのに、財産とは思えない感覚になってしまって……。 手放した方がいいかな、とか思うようになるのが絶望の果て。「この山をどう生かそうか」ということには意識が向かない、というのが一般的でしょう。 ――パートナーが森を受け継ごうとしています。 【平井明日菜】 かつて私も一緒に現地に行き、山の生活や、自伐型林業(オーナーや地域の人が小規模の山林で持続的に木を切り出す林業)をすでにやっている夫婦のような暮らしもできるのかなと思っていました。 10年あまりたった今は、状況が変わってきています。千葉県船橋市のアパートから神奈川県小田原市の国府津地区に移住して数年たちました。里山保全やまちづくりなどの活動にも参加し、楽しいし、子どもたちもすくすく育っています。 彼自身もNPO自伐協の事務局長として、自伐型林業を実践する人たちが安心して林業をやれるように支援してきた。山がない人にも提供できるように、彼らが雇ってもらえるように、その地域での環境を整えるように。引き継いだ山林を、そうして育ててきた信頼できる人たちに、任せたらいいと思っています。■なぜ森を受け継ごうと思ったのか ――自宅から400キロほど離れた、祖父の代に植えた森を受け継ぎたいのは。 【上垣】 何の関わりもなかったら、思っていないでしょうね。 子どもの頃、夏に近くの川で遊んでいた。父が連れてきてくれてキャンプして楽しいな、星がきれいだな、と。そのとき、「あれがお前の山やぞ」といわれて、「そうなんだ、僕の山があるんだ」という思いになった。 普通だったら、そこまで。「でも、山には手がつけられない」と結論すると思います。ただ、僕の場合は新しい林業のやり方「自伐型」をその後に知った。引き継げる手段があるのだから、引き継ぎたい、と思いました。 NPO自伐協は今、「あきら…この記事は有料記事です。残り2445文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






