インタビュー斎藤幸平さんはなぜ森に入るのか 気候崩壊の中に見いだす「コモン」聞き手・松尾一郎印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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ベストセラー『人新世の「資本論」』で知られる経済思想家の斎藤幸平さんは、東京大学准教授以外にも、一般社団法人「コモンフォレストジャパン」代表理事という肩書を持ちます。東京・高尾の里山に通い、メンバーで共有する「コモンの森」の活用を通して思索を深めています。 東京で育ち、森林は身近な存在だったわけでもない斎藤さんが、その取り組みを始めたのはなぜか。そして、「コモンの森」とは。Re:Ron「森林論」⑦ 経済思想家・斎藤幸平さん【動画】斎藤幸平さん(経済思想家)「コモン」と森、自らが代表理事を務めるコモンフォレストジャパンについて=松尾一郎撮影「コモンフォレスト」とは。Re:Ron「森林論」で今、考える ――どうして今、森に近づき、学ぶのですか。 「コモン」を増やしていくための一例です。コモンとは、共有のものという意味。今の資本主義があらゆるものを商品にして、貨幣がないとアクセスできないものが増えていく中で、商品化すべきでない、民主的な形で管理していくべき共有のものは当然に世の中にあります。それらを「コモン」と、私は呼んでいます。 資本主義的に考えれば、森は端的に言って、もうからない。見捨てられているという状況を逆手にとって、森を安く買い、コモンとして再生をする。そうやって、資本主義を「ハック」してしまおうというわけです。 具体的には、森の管理や再生を通じて、自然との関わり合いを取り戻したり、コミュニティーを再生したりしていくことを目指しています。ただ、森である必然性はなく、海でも、川でも、草原でも。別に寂れた商店街や廃校であってもコモンにしていく取り組みを始められたらいいと思います。 私たちの活動のきっかけは、ネイチャーガイドの坂田昌子さん(現コモンフォレストジャパン理事)たちと知り合ったことでした。私も、「コモンを広げよう」と著書などで呼びかけていたから、現場があった方がいいなと思っていた。タイミングがうまく合い、コモンフォレストジャパンの活動を始めることができました。========== コモンフォレストジャパンが買い取ったのは、八王子市裏高尾町の、人里近くの雑木林。針葉樹の人工林に囲まれ、ササなどが覆っていたのを、多種多様な植物が共生しながら定着するようにと、メンバーたちは手作業で草を刈り、枝や落ち葉などで「しがら(柵)」をつくって、雨水の流れを穏やかにし、土壌流出を防ぐ試みを続ける。そうした作業は他の里山保全活動地で見られるが、違いは目的にある。「みんなの共有財産としての森を共同で購入し、共同で管理・運営し、コモンズとしての新しい所有のモデルを社会に提示するとともに、生物多様性の豊かな森を次世代に残す」ことを目指す挑戦を続けている。========== ――森とは、どういった存在と考えますか。 コモンフォレストジャパンの「コモンとしての森」が目指すのは、単なる森林保全保護ではなく、自然との関わりを重視する共同作業を通じて、人間も自然も再生していくことです。その点で、私たちのコモン再生の活動は、人間を入れないようにゾーニングして希少な自然を保護しようとするトラスト運動とは違います。 とはいえ、コモンは森に限られません。人々が生きていくのに重要なものを資本主義の論理に任せて商品化するのではなく、国に任せたり、誰かの管理に任せたりするのでもなく、自分たちも運営とか意思決定に関わる領域を取り戻していくことが重要です。そのための現場が「森」だったということです。■「所有」のあり方に提言 ――日本の場合、所有者不明の広大な私有林があります。林野庁などによると、森林面積の6割(約1500万ヘクタール)を占める私有林のうち4分の1程度が所有者不明と推定されています。 森は日本の国土の7割ぐらいを占めるにもかかわらず、旧来の林業を行うには採算が合わないようなところがほとんどで、お金にもならないからと資本主義からも社会からも見捨てられ、その結果、人工林は荒れ放題になっている。 そうした森については、公有接収や国有地化を進めていくべきだと思います。というのも、高齢化と人口減少の時代に森をどうやって管理していくか、もっと考えなくてはいけない段階に入っているからです。 新著『人新世の「黙示録」』…この記事は有料記事です。残り2912文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません