インタビュー「森に聴く」ドキュメンタリー監督 全国巡り考えた「コモン」のこと聞き手・松尾一郎印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする【動画】今井友樹さん(ドキュメンタリー監督)自らと森との関わりについて=松尾一郎撮影
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全国順次公開中の映画「森に聴く」は、共同監督を務めた今井友樹さんが森林生態学者らと5年間にわたり日本各地の森林を歩いた記録です。込められたメッセージの一つは、「多種共存の森」の必要性。撮影を通じて見いだしたのは、多様な植物や動物、人間が共存し、人々が空間や時間、精神を共有して管理していく姿だったと言います。ドキュメンタリー監督が思い描く、「コモンとしての森」とは。Re:Ron特集「森林論」⑧ 民俗記録を続ける今井友樹さんRe:Ron「森林論」でなぜ今、「コモンの森」を考えるのか■撮影を通じて知った森と人との関係 ――森林に通ってみえてきた人と森の関係とは。 「明日をへぐる」(2021年)という記録作品をつくるとき、森林生態学者の清和研二さん(東北大学名誉教授)と出会ったことが、「森に聴く」を撮るきっかけの一つになりました。 「明日をへぐる」の舞台は高知県の山奥。土佐和紙の原料であるコウゾ栽培農家の人たちの1年を追いました。清和さんには、日本の奥地林と里山の生態系について話を伺いました。 栽培農家たちのコウゾは100年続けて、育てられることもあります。清和さんは「コウゾは元々明るいところに生える木で、太くなる木や大きくなる木が覆いかぶさってきて、自然界では数十年で消える木だと思う」と言いますが、人の手が加わることで100年も生きるわけです。 「人間が一生懸命手入れをしてコウゾを育てている」と私が言うと、清和さんは「コウゾは長生きするために人間を利用しているんだね」と返してきました。私には「コウゾは和紙の原料」としか見えておらず、清和さんが全然違う発想で植物について捉えていたのが印象的でした。 戦後まもない日本では、最大で年間8千万立方メートルもの木が切り倒されていたことも教えられました。直径80センチで高さ30メートルの大木が毎年1千万本相当も切られていたわけです。跡地には、スギやヒノキ、マツといった針葉樹ばかりがモノカルチャーで植えられた。そうした拡大造林が続いた結果、日本の森林の約3分の2が針葉樹の人工林になった。近年、豪雨などで山が崩れる災害も相次ぐようになった。 だから、清和さんは、世界中のすべての森林破壊の原点は林業であると指摘します。■日本の森林の転機は戦後 ――日本の森林は戦後変わっていった、と。 コウゾ農家たちと話すと、かつてあった里山では、現金収入のため、焼き畑をしてトウモロコシやアズキを植えていたと聞きました。ところが戦後の拡大造林政策で変わった。補助金がつき、スギやヒノキを植えた方がお金になる。90代の方にインタビューすると、「木を植えてお金になるってどういうことだ、と不思議に思いながら植え続けた」と振り返っていました。 清和さんが研究に使った人工林をみせてもらったことがあります。 スギの人工林で、67%間伐した「強度間伐」の区域(20年間で3本に2本の間伐を3回)、33%の「弱度間伐」の区域(20年間で3本に1本を3回)、0%の「無間伐」の区域という三つを比較した場所です。 無間伐の人工林は、真っ暗で地面に下草がなく、落ちたスギの葉は分解されていませんでした。それが、弱度間伐、強度間伐と移るにつれ、森の中がどんどん明るくなり、下草の量が増え、風散布や動物散布とかで飛んできた広葉樹の種が根付き、どんどん太っていました。しかも、スギと並んで、まっすぐで節が少なく、建材に適した生え方をしていました。理想的な混交林です。 さらに土中の環境も区域ごとに違って、間伐が強い区域ではミミズがより多くすみ、落ち葉の分解が進んで土が軟らかくなり、森が雨水を蓄える機能を果たすようになっていました。オオイチョウタケなどのキノコが生えていて、豊かな森になるカギと考えられている外生菌根菌の存在もはっきりわかりました。■みえてきた「豊かな森」の真の姿 ――多種共存の森の秘密が見えてきたわけですね。 そうです。清和さんは、日本…この記事は有料記事です。残り3709文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






