ストーリー2026年7月3日 12時00分伊東聖印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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米粉ではなく、生の米からパンを作り、販売している女性がいる。小麦粉はもちろん、砂糖も使わず、独特の味や香りが人気を呼びつつある。この女性、パンとは全く結びつかないヤスリの製造会社の5代目社長。ただ本人は「共通点がある」と言う。 広島県東広島市志和町別府(べふ)。田んぼや山林が広がる地域の古民家の縁側に、十数種類のパンやピザが並ぶ。綿岡美幸さん(52)が2024年8月に開いた「ワタオカ発酵舎」だ。 食べてみた。食感はパンだが、口の中に米の香りが広がる。あんパンは、うすめの生地にあんがたっぷり。でも全く甘くない。初めて食べる味だ。「あんパンが一番、賛否が割れますね」。綿岡さんが笑いながら言った。 米のパン作りのきっかけは、妊娠した13年前。いつもと同じものを食べているのに、変な味に感じた。それ以来、徐々に食生活を見直した。米や小麦粉、砂糖を断つと体調が良くなった。ただ知人に心配されるほど体重が落ち、炭水化物をゼロにするのは良くないかもと思い直した。 同県呉市から東広島市に移住した頃で、周りの田んぼで米が作られなくなっているのも気になった。元々、大のパン好き。米からパンを作ってみようと思い立った。 綿岡さんが社長を務める家業のヤスリ製造会社は、1890(明治23)年創業の「ワタオカ」(呉市仁方(にがた)西神町)。仁方地区は一時、国内のヤスリ製造量の95%を占めたと言われ、ワタオカは爪ヤスリの製造に注力している。 会社には「爪ヤスリは、足の巻き爪にも使えるのか」といった問い合わせがしばしば届く。綿岡さんは、フットケアについて学び、巻き爪用のヤスリの開発を試みたが、うまくいかなかった。巻き爪で悩む人の多さに驚くと同時に「足だけの問題じゃない。体の根本から考えないといけないのでは」との思いが強くなった。頭の中で、米のパン作りとつながった。 もう一つ、ずっと考えていたことも、パン作りを後押しした。職人の技術が生み出すヤスリは、海外の安い製品に押されて買いたたかれる。なぜ、製造業・製造者はこんなにリスペクトされないのか……。「『ものづくり』がもっと大切にされるべきではないか」 ワタオカの業務として、米のパン作りを始めた。従業員に説明すると「え?」と驚かれたが、「何か目指すところがあるのだろう」と理解を示してくれた。 綿岡さんは「米のパンを食べることで、自分の体のことを考えるきっかけにしてもらいたい。原料を含め、ものづくりについても思いを致してほしい。ヤスリ作りと米のパン作りは、私の中ではつながっているんです」と話す。 ワタオカ発酵舎は木、金曜の午前11時~午後2時。問い合わせは電話(080・6235・2133)で。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません









