視点・解説「水俣病」は環境意識の問題? 市の説明に記者が感じたひっかかり2026年7月3日 12時00分東京社会部 島崎周印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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水俣病に関する教科書の記載について取材した。今年で公式確認から70年。国にも責任がある公害をどう伝えていくのか、考えさせられた。「克服」「乗りこえた」水俣病に関する教科書記述、患者側が異論訴え 「水俣市は、公害を乗りこえた」「公害問題を克服」「生まれ変わった水俣市」。中学校の社会科教科書のこうした記述について、「水俣病被害者・支援者連絡会」は、教科書会社や文部科学省などに改善を求める要望書を出した。「終わった問題かのように受け取れる」という訴えだった。 なぜこういった記述なのか。教科書会社に聞くと、背景に公的資料の存在が浮かんだ。熊本県水俣市のウェブサイトや環境白書だ。 都留文科大の小川輝光准教授(社会科教育学)は、公的資料は「被害を拡大させた責任を問われた国が作っているもの」と指摘。教科書作成の際に公的資料に大きく依拠することは「加害者側に加担することになりかねない」と話す。 公式確認70年を前に4月、水俣を訪れた。患者団体などの話を聞き、市立の水俣病資料館に入った。上映していた解説映像でナレーションが流れた。 「悲しい出来事を防ぎ、安全で美しい環境を守ることができるかどうかは、家庭や学校で、または職場で私たち一人一人が環境に優しい行動をできるかにかかっているのです」 ひっかかりを感じた。 映像は、今も多くの人が裁判を起こしていることや、差別や偏見の問題が続いていることを伝えてはいた。しかし最後は、「一人一人の環境意識」の重要性に結論が置かれていた。 石原宏高環境相は5月の慰霊式で「政府を代表して、水俣病の拡大を防げなかったことを改めて衷心よりおわびを申し上げます」と話し、国の責任を明言した。水俣病を「環境意識の問題」として教訓とすることには、問題が不正確に伝わる恐れがあると思った。授業で取り上げられた記事 生徒「苦しむ人がいないかのように」 教科書の記述に関する記事が出た後、神奈川学園中学・高等学校(横浜市)の授業で記事がとりあげられたと聞いた。生徒からは「『生まれ変わった』という表現だと、全面的に解決し、苦しむ患者の人がいないかのように受け取れる」といった声が出たという。 6月公表の環境白書では認定患者数について、生存者だけでなく死亡者を含めた表を新たに載せた。被害が矮小(わいしょう)化されるとの指摘で、一部を見直した形だ。 自治体や国、各教科書会社は、当事者の声を軽視していないか検証しながら、見直しを進めてほしい。 しまざき・あまね 2014年入社。大津、鹿児島総局、西部報道センターを経て東京社会部。写真家ユージン・スミスさんの患者写真を見て、水俣病に関心を持った。写真展を見に5年前に初めて水俣を訪れ、今回は久しぶりの再訪だった。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






