【社説】皇室典範改正案 「男系男子」へのいびつな傾斜が鮮明に2026年6月26日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●皇室典範改正案は、旧宮家の男系男子を養子に迎え、その子が皇位継承資格を持つことを前提にした内容になっている●男系男子へのいびつな傾斜が鮮明になり、進め方も公正とはいえない●将来の女性・女系天皇への道を妨げるなど問題が山積。このまま進めれば大きな禍根を残す。再考が必要だ 政府が皇室典範改正案の要綱をまとめた。女性皇族は結婚により皇族の身分を離れない▽皇族の養子を禁じる規定の例外として、旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎えることができる――の2点が柱だ。さらに26日に判明した法案は、養子の子が男子なら皇位継承資格を持つことを前提にした内容になっている。 今回の議論は「皇族数確保のためにどうするか」にとどまるたてつけだったはずだ。ところが、衆参正副議長のとりまとめ、政府の骨子、要綱、法案と段階を踏むごとに、男系男子への歪(いびつ)な傾斜が鮮明になり、将来の皇位継承のあり方を先取りする真意があらわになってきた。とても公正とはいえない進め方だ。 養子解禁は女性・女系天皇への道を妨げるのみならず、①事実上世襲の貴族をつくることにつながる②今の天皇家と共通の男系の祖先は室町時代にさかのぼり、国民に受け入れられるか懸念される③養子選びに時の政権の恣意(しい)が入る恐れがある④皇位継承を巡る紛争の元になりうる⑤国民に信頼される有為な人材が実際にいるのか不明――など問題は多岐にわたり、さらに新たな論点も浮かびあがる。 現在の典範では、皇位継承資格があっても、継承順位が天皇の子や孫(親王)より低い男性皇族(王)は、その意思に基づき皇族の身分を離れることができる。 要綱では、養子本人は皇位を継承しないが、養子を「王」と明示的に位置づけ、さらに「意思に基づき皇族の身分を離れることができない」とした。これは一般の王とは違い親王と同様の扱いといえる。そして養子は「配偶者と子どもがいない15歳以上の男子」だ。事情を十分理解できないまま皇室に入れられ、その後は一生離脱が認められないとすれば、人権上の問題が大きいといえないだろうか。 結婚した女性皇族に住民基本台帳法を適用するのも疑問だ。天皇と皇族は皇統譜(皇室の戸籍の面も持つ、血統の正統性を示す公文書)に登録されるが、それとは別の、一般国民と同じ扱いを適用することになる。結論を先送りしたはずの「結婚した女性皇族の配偶者や子を皇族とするかどうか」という論点について、「皇族にせず一般国民のままにする」という意志を埋め込んでいるように見える。 野党から、立法府の総意と認識していないと反発が強まるのも当然だ。このまま改正案成立を強行すれば大きな禍根を残す。皇位継承のあり方をどうするのかについては今後、正面から議論することが必要だ。再考を求めたい。「女性皇族が残る」「男系男子の養子」 皇室典範改正へ知りたい要点「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません