【社説】再審法制の整備 政府法案で日野町事件の例は救えるか2026年6月24日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●1984年に起きた殺人事件で、検察が再審公判では有罪立証しない方針を明らかにした●事件が浮き彫りにした再審の課題は、制度を見直す法案では十分に解消されていない●冤罪(えんざい)被害を早期に救える姿にするため、国会は法案の修正を尽くすべきだ
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滋賀県日野町で1984年に起きた強盗殺人事件で無期懲役が確定後、病死した阪原弘(ひろむ)さんの再審で、検察側が有罪立証しない方針を明らかにした。無罪が確実となった。 事件で浮き彫りになった再審制度の様々な課題や、ひいては刑事裁判全体の問題が、いままさに国会で議論されている。懸念は十分に解消されているのだろうか。 答えは否だ。 最大の焦点は証拠開示だ。日野町事件では、阪原さんが遺体発見現場へ自ら案内したとする捜査報告書が有罪の根拠の一つとなった。だが、報告書にはられた写真のいわば「元データ」とも言えるネガフィルムが、家族による第2次再審請求後、裁判官の勧告で検察側から開示された。ネガによって警察官の誘導の可能性があると認められた。 ネガは当初、警察から検察に送られていなかったという。重要な証拠がなぜ、留め置かれたのか。検察は証拠を手にした時点で確定判決の揺らぎに気づけなかったのか。疑問は絶えない。 そもそも証拠は、公正な裁判のため、国民が捜査機関に強大な権力を与えて収集されたもので、公共の財産だ。にもかかわらず、捜査側に都合の悪い証拠が握りつぶされていたことは、これまで何度も発覚してきた。 再審制度を見直す刑事訴訟法改正案では、裁判所から検察に対し「必要性・関連性のある証拠」を提出するよう命じる制度が創設されている。 だが、関連性を判断するのは検察で、開示の幅が狭まるとの懸念はぬぐえていない。検察官の手持ち証拠を把握したうえで再審請求人が提出命令を求められるよう証拠の一覧表を開示するようにするほか、関連性を問わずに裁判官が自ら開示を命じられる制度は検討に値する。 日野町事件では2018年の大津地裁の再審開始決定後、検察は2度抗告。決定の確定まで7年以上かかった。 法案は「十分な根拠がある場合」は例外的に抗告が許されると定めており、「抜け道」との批判がある。日野町事件の抗告には「十分な根拠」があったのかどうか。今後の抗告のあり方を考える意味でも、検証すべき論点だ。 法案は衆院で可決され、審議の場は参院に移った。課題はまだ山積みだ。阪原さんは最後まで「やってへん」と家族に訴え、この世を去った。逮捕から38年。本人と家族に過ぎた無念の日々に思いをはせ、国会は冤罪(えんざい)被害を速やかに救える仕組みへつなげる修正を尽くさなければならない。時間はまだあるはずだ。日野町事件やり直し裁判、検察側が有罪主張しない方針 無罪確定へ「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






