【社説】再審法制の整備、何のための見直しか 修正点がたくさんある2026年6月10日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●再審制度を見直す法案審議が国会で続いている●検察の手持ち証拠が適切に開示されるようになるのかといった主要な論点で懸念がぬぐえていない●冤罪(えんざい)被害者の早期救済という目的に照らせば、修正は欠かせない

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何のための見直しなのか。国会での質疑から、問題点が次々と明らかになる。再審法制の整備は冤罪(えんざい)被害者の早期救済が目的のはずだ。法案には修正すべき点が山積する。採決を急いではならない。 最も重要な論点は証拠開示だ。法案では、有罪が確定した裁判で提出されなかった証拠を、検察に開示させるためのルールが新設された。裁判所が「再審請求理由に関連する証拠」について検察に証拠提出命令を出す流れだ。 だが、検察側が関連性を狭く捉えて開示範囲を限定すれば、無罪につながる証拠が埋もれる恐れは拭えない。法務省は「裁判官による開示勧告という従来の運用も否定しない」などとするが、検察側は勧告に従う義務はない。提出命令の要件を広げるといった手立てが必要だ。再審請求人や弁護人も証拠の一覧が閲覧できる仕組みが欠かせない。 さらに、開示された証拠は再審手続きやその準備のためにしか用いることができないという「目的外使用」の禁止規定も問題だ。袴田巌(いわお)さんの再審請求は、弁護団が支援者らと証拠を共有し、確定判決に矛盾がないか検証を重ね、「開かずの扉」が開いた。 法務省側は「関係者のプライバシー保護」などを理由に挙げる。被害者らへの配慮は当然だが、一律の禁止は不要だ。強く反対する。せめて裁判所が公開の可否を判断するなどの次善策を検討できないか。罰則付きの規定は弁護活動を萎縮させ、非公開の再審請求審のブラックボックス化がより進む恐れがある。 法案提出前に最大の焦点となった検察官抗告も、自民党議員から「答弁が後退している」との指摘がある。 政府案が3度も修正される異例の展開を経て、抗告は原則禁止とされた。だが、「十分な根拠がある」場合を除くという例外規定に大きな問題があるうえ、法務省は「規定は検察が順守すべき規範で、裁判官の判断事項ではない」と答弁。改めて「抜け道」があることが明白となった。 再審法制の整備は雪冤に半世紀かかった袴田さんの問題を機に始まった。現行法ができて初めて再審の規定が改められるというだけでよしとはせず、過去の冤罪事件の教訓を十分に生かした改正となるよう最善を尽くしてほしい。 袴田さんの姉秀子さんは法務委員会で「(政府案では)巌は助からず、処刑されていた。(刑事訴訟法は)神様が作った法律ではない。人間が作った法律を、人間として改正していただきたい」と訴えた。立法府は党派を超え、この声に応えるときだ。再審手続き「ブラックボックスになる」 証拠公表の禁止に学者ら反対「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする