【社説】再審法制の整備 冤罪の早期救済には国会で修正が不可欠だ2026年5月15日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●再審制度の見直しに向け、政府は刑事訴訟法改正案を閣議決定した●再審開始決定に対する検察官抗告は原則禁止されたが、例外が残ったのは問題だ●証拠開示の問題を含め、冤罪(えんざい)被害の早期救済には、国会審議での修正が欠かせない

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「再審への扉」はさび付いていないか。法制上の整備が初めて進んでいる。だがまだまだ不十分だ。速やかに無辜(むこ)を救済するためには、国会審議での修正が欠かせない。 政府は、裁判所の再審開始決定に対する検察の不服申し立て(抗告)の原則禁止などを盛り込んだ刑事訴訟法改正案を閣議決定。今国会に法案を提出した。現行法は再審の規定が乏しく、法の不備で冤罪(えんざい)被害の救済が遅れると批判されてきた。規定が改正されれば1948年の制定以来初めてだが、現段階の案では十分とは言えない。 当面の焦点である検察官抗告について、政府案は当初現状維持の方針だった。だが自民党内の異論を受けて「付則で原則禁止と明記」に転じ、さらに「本則で明記」と修正する異例の展開をたどった。 ただ、「十分な根拠がある場合に限り」抗告できるという抜け道が残るのは問題だ。これまでと何が違うのか。十分な根拠なしに抗告した例がもし存在するならばその検証をすべきだし、存在しないなら今回の規定は従来と変わらないことになる。本来は全面禁止にすべきで、仮に例外を設けるにしても、より狭める要件が不可欠ではないか。 併せて国会での修正が必須なのは、証拠開示の問題だ。 刑訴法は再審開始の条件を「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」が必要と定める。ただ請求人は、検察が通常の裁判で裁判所に提出した証拠のほか、どんな証拠を持っているのかわからない中で請求せざるを得ないのが現状だ。 もし検察や警察に決定的な証拠が隠されていても、請求人はその存在を知らずに主張を組み立てることになり、裁判所もその証拠の開示を命じられない恐れがある。 これまで、再審請求段階で裁判官が検察に開示を促した末、初めて重要な証拠が明らかになり、再審開始決定や無罪の決め手になった例が少なくない。袴田巌(いわお)さんの再審無罪の決め手となった「5点の衣類」のような証拠が開示されるか、担当裁判官次第で異なる余地を残すのでは困る。 証拠のリスト化など、請求人側が幅広く証拠にアクセスできる手段の拡充が必要だ。検察も、より公正な裁判の実現に協力するのが筋だろう。 今回の見直しは袴田さんが死刑確定から44年後に再審無罪となったのがきっかけだ。刑事司法の不全が明らかになった以上、それを正し、制度に新たな命を吹き込むのが立法者の務めである。袴田さんの無罪を信じ続けた姉の「正常な法律にして頂きたい」との声に応えるときだ。再審見直し法案、26日にも国会審議入りへ 証拠開示の範囲など焦点「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする